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ロープアクセスは塗装工事には不向き?工事内容から見る費用の考え方とは

By 2024年2月27日防水担当の日誌

先日、ロープアクセスという工法を使った工事をしました。

この工法は高いビルなどの壁面にロープをたらし、職人がロープを使って移動しながら工事する方法なのですが、この工事ができることを知ると「もしかして足場を建てないで塗装工事ができるのではないか?」と誤解をされるお客様がいらっしゃいます。

 

ロープアクセスでできること、できないこと。またそれにまつわる工事費用のお話をいたします。

間違った工事費用の値段交渉とは

 

最近さまざまな物価の高騰などがあり、塗装工事においても材料費やさまざまなもののコストが上がってきています。

そうなると、みなさんは少しでも工事費用を安くしたいと考えるでしょう。

これはあたりまえのことです。

しかし、安くしたいと思うあまりに、間違った値段交渉をされることがあります。

 

その間違った交渉の一つが、このロープアクセスの工事です。ロープアクセス工事は、屋上にロープを固定し、職人が一人で作業をします。足場を組むことなくできることから、技術料は高いものの通常の工事よりはリーズナブルと言えるでしょう。

 

しかし、あくまでもこれは簡易工事です。大切な建物の10年ぶりの工事にもかかわらず簡易工事でいいのでしょうか?足場代は安くなりますが、それでも100万超えの工事です。

写真をみておわかり頂けますように、ロープアクセス工事の場合、職人が持てる道具や材料には制限があります。

そのため、塗装する場合にはバケツひとつしか持てませんしハケとローラーを腰にさすのが精一杯です。

両手を使う場合は体制が不安定になりますし、何よりも壁を蹴りながら上下に動くため足場を組んだ塗装と同等の仕上がりにはなりません。

 

また、足を壁からはなすと遠心力でロープに吊された職人は回転するので、塗料などが下に飛び散ります。

お客様の中には、ロープアクセス以外にも足場工事を割け費用を下げるために、「梯子でできないか?」「脚立でできないか?」と聞いてくる方がいらっしゃいます。

 

みなさん、少しでも費用を抑えて塗装工事ができないか…と考えて、このようなご提案をされるのですが、労働安全衛生法に違反にかかわってくるためできません。

ちょっとした補修工事などであれば話はまた別ですが、梯子や脚立を使用した外壁の塗装工事は、職人の安全が確保できないのです。

またこれもよくある誤解なのですが、材料にいいものを使ったら良い塗装工事になると思われますが、これは違います。

良い材料でも、正しい手法で適切な箇所に使用できなければ良い効果は期待できません。

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それを、ネットで薦めていた塗料だからと「使って欲しい」と言われることがあるのですが、お客様の家に合わない塗料は使用ができないのです。

例えば、お客様の家は壁自体に湿気が多く、上手く湿気を外に排出させる塗料を選ばない外壁があるとします。

そこを、30年保証などをうたった密閉力の良い塗料を塗ったらどうなるでしょう。

壁から湿気を逃すことが出来ず、壁が内側には湿気がたまり最悪の場合は雨漏りの原因となることに。

このように、ネット上ですすめられているものが、必ずしもお客様宅の家にぴったりと当てはまることはないのです。

 

それでもなお、どうしても…というリクエストがあればお客様がお望みの塗料を使うことはできますが、その場合は保証ができません。

そうお伝えすると、「なんで保証がつかないのですか?」と言われることがありますが、メーカーとしても塗装する土台の状態が想定したものとちがう場合、保証がだせないのです。

 

他社ではやれる工事なのになぜ塗装職人ではできないのか

 

 使用するのに向いていない塗料や、梯子や脚立、ロープアクセスでは工事が難しいことなどを説明すると、「他社さんはやってくれるっていっていましたよ」と言われることがあります。

 

この言葉の発端は、よく量販店などで「他店より安ければお値引きいたします!」といったあおり文句がありますが、たぶん量販店で少しでも電化製品を安く買うためにする交渉と同じ感覚なのかもしれません。

量販店の場合は、全く同じ品質のものを売っているため原価がわかりやすいので、他社と比較しながら値引きができます。

しかし、家の塗装は違うのです。

 

まず、それぞれの業者によって工事の見立てが違います。

A社では足場を建てて、屋根はカバー工法、壁面はシール、塗装など全面工事。

B社は簡易的な単管足場で、屋根は塗装、壁面は塗装の2回塗り。

 

この時点で、材料費、人工代、設備費などの原価が全く違います。

原価が変わってしまうので、費用が変わるのは当たり前です。

ではなぜこれだけの工事の原価に差がでるかというと、何もB社が安くしているわけではありません。工事の品質を落として安くしているだけで、最悪の場合技術力の無い下請けなどに丸投げをして、A社よりも利益を上げている場合も。

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ですので、「他社さんはやってくれるといっていましたよ」と言われても、塗装職人は安いやっつけ工事をして利益を得る会社ではないため、そもそも工程の組み立て方から違います。そのため、同じ工事はできません。

また、ここでさらに誤解がうまれるのが「本当はB社くらいの工事内容で良いはずなのに、工事費用を高くするためにわざと過剰な工事をしているのではないか」ということです。

 

もちろん、そういう業者もあり被害に遭われている方もいるので「全ての業者が違います」とは言えないのですが、すくなくとも弊社は違います。

塗装職人では、お客様のお宅の状態にそった工事をご提案させて頂いており、もちろんお客様の予算によっては、優先順位の低い工程を削ったり、数年後に回せる工事箇所は回すご提案したりさせていただくことも。

余計な提案はありません。

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ロープアクセス工事についても同じです。出来る工事内容の場合はご提案いたしますが、向いていない工事の場合はご提案できないのです。

どうしてもロープアクセスで外壁塗装をやりたい場合は、残念ではありますが…他社のロープアクセスで塗装工事を行っているところで工事をするのが良いでしょう。

しかし、それは本当にお客様の家に合う工事かと言われれば、僕としては何も言えなくなってしまうのです。

 

弊社では、ロープアクセスの工事は建物の全面塗装においてお勧めはできません。

とはいえ、他の工事ではロープアクセス工事をすることもあります。

現場に合わせた工事のセレクト、これが弊社の基本です。

ロープアクセスですが、向いている工事もあります。

それは、今回おこなったビルの壁面にあるベントキャップの取り替え工事です。

(取り外したベントキャップ)

こちらのお客様が所有していらっしゃるビルは11階建てのため、ベントキャップの取り替えのために足場を建てると、ものすごい費用がかかります。

もちろん、ビル全体の塗装などがあれば話は別ですが、ベントキャップの取り替えのためにだけですと足場を建てた工事は非常にコスパが悪い工事となってしまうのです。

また、ベントキャップの取り付けであれば工事中の飛び散り被害も最小限となります。

 

ロープアクセスに適した工事とは

 

 今回はロープアクセスを使って、11階から順にベントキャップを交換していくことにしました。

お客様のビルは繁華街にあり、ビルの下にはある程度交通量もあります。

ですので、材料などの落下などにはあたりまえではありますが細心の注意を払うことが必要です。

まずは命綱とも言える、ロープの固定。屋上の笠木部分に保護具を当てロープが切れないように固定をします。

角部分にはテンションがかかりやすく、削れてしまう場合も。

また、笠木部分に施してある防水層が切れないようにするための養生にもなっています。

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ロープアクセスは『てこの原理』などをつかってロープを使いながら昇降するのですが、ゴンドラはワイヤーで支持します。ロープアクセスはその名の通りロープです。特別教育が必須です。

職人は腰部分にカラビナをたくさんつけ、安全対策として写真の赤い袋部分に金属の固定具がついており、これが落下防止装具です。

 

ロープアクセスは、作業床もなく複数の道具や材料を持つことはできませんので、ものを取るだけでも屋上と壁面を何往復かすることになります。さらに、体制の固定も難しい工事です。

普通に座っている状態であれば、吊られた状態でも壁に向かってまっすぐ体を保つことができるのですが、写真のようにものを取ろうと後ろにのけぞると、壁から足が離れくるくると体がまわる状態に。

このくるくると回ってしまう時に、塗料のついたハケなど持っていたら大変です。

壁だけで無く、下を歩いている人や車などにも付着してしまう恐れもあります。

 

今回はベントキャップなので、飛び散る恐れがあるものはシール材くらいです。

そのため、慎重かつ丁寧に工事を行いました。

古いベントキャップを外し、腰につけたバッグの中にいれ、新型のベントキャップを取り付け、テープを打ち、プライマーを塗りゴミを取ったところで一旦降ります。

その後シーリングをして、完成です。

簡易でやる工事ではありますが、特殊作業なため…これはこれで費用がかかります。

工事費用と労働安全衛生法の関係から見える工事の品質

 

先日、工事をした際に電線防護管を取り付けて工事をする現場がありました。

この電線防護管は、塗装工事する建物と電線の距離が近い場合には、感電などの恐れがあるために必ず行わなければならない工事です。

しかも、取り付け自体は塗装業者ではできないため電力会社に依頼して行うこととなります。

そのため工事費用を弊社が決めているわけでは無いため、値引きもできません。

しかし、その際に「電線防護管をつけずに工事することはできませんか?」とご相談が…。

 

これには「できません」としかお答えできず、「どうして?」と聞かれたので「つけずに感電災害をおこした場合には労働安全衛生法違反によって、懲罰罰金が科せられてしまいます」とお伝えしました。

労働安全衛生法によって、難しい工事はいくつもあります。

 

職人の安全を守るためしいてはお客様の家を守るためには必要な法律なのですが、お客様から値引きをもとめられるのがなぜかこの『職人の安全を守る』ための工程が多いのです。

前回のブログでもお話しましたが、間違った値段交渉がまさにこの部分と言えます。

関連記事 前回のブログ

業者の工事品質が分かる 塗装防水工事の仕上げ検査

 

安全対策として必要な工程をなくすことで、費用をさげることはできません。

安全対策をしていないということは、職人は安心して作業ができないため、工事の品質を下げることにも直結します。

ロープアクセスや、脚立、梯子での塗装。感電防護管なしの塗装。多少安くなったとしても、どれも事故や被害が出てしまったら莫大な費用がかかるのです。

関連動画 5階建てビルのロープアクセス作業

もしも、費用を下げたいのであればネットで安い工法や材料を探すのでは無く、まずはご相談下さい。

お客様の家に必要な工事と、その中で何を最優先にすべきか判断するためのサポートを致します。

最終的に工事内容を決めるのはお客様です。

 

そのための、知識の共有や家の状態の判別などはプロである我々がお伝え致します。

大切な家を守るために、ご判断頂ければ幸いです。