ウレタン防水は防水性能も高く一番多い施工方法です。
また、ウレタン防水は塗装職人でも最も得意とする防水方法です。資産価値を維持するお手伝いができると思いますので、ぜひご相談いただければと思います。
液状化したウレタンゴムを流し固まるとゴムになります。ゴム故にその厚みで耐久性も変わってくるため、より高粘度のウレタンをたっぷり流して肉厚に仕上げることで耐久性を発揮します。
厚さを確保するために膜厚計という厚さを測ることもありますが、床は必ずしもフラットな平面ではないため、塗布する際の液状化したウレタンも床の微妙な高低差の影響によって、多少厚みが変わる場所が出てくるときがあります。
雨が止んだ後も数日水たまりが残ってる、排水溝(ドレン)までの水はけが悪かったりする場合で、あまりにも高低差があるような場合はディスクサンダーで研摩したり、モルタル等で盛ったりして高低差をなくす「不陸調整」をします。
ウレタン防水は見た目で品質の程度は分からないので、膜厚計は品質を測るひとつの手段でもあります。
特に平面より、立ち上がりの部分などは、重力の影響でウレタンを塗布しても下に流れてしまいがちになるため、平面で使用する通常のウレタンより流れにくい硬いタイプのウレタンを使用して厚みをつけるように使い分けています。
ウレタン防水は工法によって層の厚さが変わります。ゴム自体はどれも2層が一般的ですが、その下地に塗布する接着剤の「プライマー」と一番上に塗る仕上げ塗材の「トップコート」を入れると4層になります。
これが一番シンプルな「密着工法」です。
合計4層の施工の場合は、面積が小さいベランダでの施工が多く、屋上で下地が傷んでいる場合などは、ウレタンを塗布する前に (通気緩衝シート)というものを一枚かませ通気緩衝工法という施工をします。
ウレタン防水工法
密着工法
密着工法という一番シンプルなウレタン防水です。順序としては高圧洗浄をしたあと乾燥させて、下地の状態が悪い場合には、クラック補修などの下地補修をしてから、さらにモルタルを一層塗布して補修をします。
あとはプライマーを塗布して、ウレタンを合計2層流してトップコートで完了です。
ゴムチップなどを入れて滑り止め対応もできます。
クロス貼り工法
密着工法だけでは後々のクラックによる漏水が不安な場合は、密着工法の工程の中に、ガラス繊維のメッシュ状の「クロス」を貼りつけてクラックに強く対応させた工程がプラスされます。
動きに対応するため、ウレタン自体の強度を高めてくれます。床平面、立ち上がりともに貼ります。
通気緩衝工法
屋上などのウレタン防水の場合、大きい面積の分だけ下地から湿気が上ってきて防水層のふくれを生じさせる原因になります。その湿気を逃がすために脱気筒というものを取り付けて湿気を逃がします。
またクラック、欠損、モルタルの劣化などで、下地が非常に劣悪な場合、屋上全体にシートを一枚敷きこみ、その後ウレタンを流しこむことで、下地の影響をウレタンから遮断して耐久性をよりアップさせます。
たっぷりなウレタン防水材性能を高めて、隙間なく雨漏りをシャットアウトさせるためにも、現状の下地調査から入ります。
クラックがない、劣化が少ない下地であれば、言うことなしですが、クラックがあちらこちらにある、下地が浮いているなどの現在の防水層の劣化症状が見受けられる場合は、今現状の修復から始めるのが最優先かつ重要です。
実質的に雨漏りを防ぐ肉厚何層のウレタンを活かすためにも、まずそのウレタンなどの防水材を長持ちさせるための下地の修復や補修が必要になるということです。
もっとわかりやすく言えば、ウレタンで一旦防水がされたとしても、下地の補修が甘いと、下地の湿気などが上ってウレタンなどがゴム風船のように膨れたするなどして切れやすくなるのです。
また現状の下地の目が粗く凸凹していては、排水溝ドレンに流れるまでの水はけも悪くなります。
水はけを良くするためにはできるだけ平らにする不陸調整というものも必要になってきます。
あまり凸凹の上を歩けばウレタンの切れる要素にもつながります。
ウレタンの密着性も均一ではなくなるため、その下に貼る中敷きのようなシートや、ウレタンそのものの剥離も生じやすくもなります。
ウレタンを塗布するまでの下準備がしっかり整ったら、そこではじめてウレタンをたっぷりと流し本格的に防水を完了させていきます。
ここからは、工程ごとにさらに詳しく見ていきましょう。
雨漏りの不安をなくす、肉厚のウレタン防水の工程
高圧洗浄
まずは長年こびりついてしまった汚れやコケなどを、150キロ圧のエンジン式の高圧洗浄できれいにします。特に押えコンクリートや保護モルタルの下地については、ザラザラとした砂が頑固に付着しているので念入りに除去していきます。
通気緩衝工法という工法の場合、その上に貼る自着シートやパンチシートなどのシートやプライマー(接着材)などの密着性が高まり剥離や膨れなどの現象を抑えてくれるので洗浄も重要です。
伸縮目地のキャップ撤去およびシーリング
伸縮目地は地震などの衝撃やモルタル自身の膨張・収縮などの挙動から、クラック(ひび割れ)を防ぐために設置されています。
固い屋上の床一面よりも、ところどころに継ぎ目があった方が、そこに衝撃などの力が集まりやすく、他の部分までひび割れを広げさせないわけです。普段よく見かけるのは、駐車場などの土間や擁壁などです。
その伸縮目地の一番上にかぶさっているものがキャップで、長年メンテナンスをされていない屋上では、このキャップが長年太陽光線を浴びて反り上がり突出していることがあります。
それを撤去した後にシーリング(コーキング)をします。
モルタル下地調整&補修
下地が悪い場合はディスクサンダーなどで研磨をし、クラックが多い屋上にはモルタルを塗布して下地を作ります。
わかりやすく言えば、セメントを練り上げて作業する左官屋のように、コテを使って厚みを均一にしてモルタルを塗布していくのです。クラックだけでなく、高圧洗浄で表面上がきれいになったとしても、下地のモルタルの劣化の様子が著しければ、モルタル補修をしたほうが耐久性が断然に変わってきます。
このモルタルの厚みを均一にするのも防水職人ならではの仕事です。
また水はけを良くするための不陸調整をする場合、このとき平行しておこなうこともあります。
クラック補修
ひび割れはシール材(コーキング)で、埋めて処理します。クラック奥深くまでシール材を注入します。クラックを埋めてモルタル補修をする場合もあります。
シール材を奥深くまで注入させるために、ひび割れに沿ってディスクサンダーで幅を広げて処理するUカット工法などがあります。
プライマー塗布
密着工法というウレタン防水の中でも一番シンプルな工法では特に重要な工程です。絶縁シートやウレタンを塗布する前にこの接着材料であるプライマーをたっぷりと塗布することで接着力が増します。
プライマーはローラーで塗布します。施工に慣れてくると、どうしても力強くローラーを行き交いさせて転がしてしまいます。これがプライマー密着不足のひとつの原因とも言われています。
密着性を高めるためには、液体をたっぷり吸収するというローラーの特性を生かし、やはり下地にあふれるようにたっぷりとプライマーを吸収させるような施工を心がけています。
クロス貼り
クラック補修をしただけでは、今後予想されるクラックについては不十分な場合があります。その場合、クラック補修をした後に、メッシュ状のクロスというシートを貼ります。
ウレタンの下にこのクロスを一枚かませると、メッシュの網目による伸縮を利用して、モルタル下地の収縮によって影響されるウレタンの切れなどを防ぐことができます。
密着工法に、このクロスをプラスしたものをクロス貼り工法とも言います。自着シートやパンチシートを敷いた通気緩衝工法などの場合も、クラックに対しては、立ち上がりなどの部分的な場所にクロスを貼り、伸縮目地のシール後にもクロスを貼ります。
絶縁シート敷き込み
読んで字のごとく、下地と防水層を断絶させるものです。下地がクラックだらけ、ボロボロともろくなっているなどの場合は、絶縁シートを敷きこみます。ウレタンなどの防水材を施工するまえに、この絶縁シートを一枚かませることによって、どんな下地の状況が悪くても、その影響を防水材に直接伝えさせないために敷き込みます。
ちなみにこの絶縁シートは、ウレタン以外の塩ビシート防水にも使われます。
脱気筒
よく乾燥させて施工をした防水がなされていても、下地からの湿気は少なからずあります。
通常湿気は上に上ってくるので、密着不足であれば逃げどころを求めてすぐに風船のように防水層に膨れなどを発生させてしまいます。
通気緩衝工法や塩ビシートなどの防水工法の場合は、防水層の下にある通気層を通って脱気筒から湿気を逃がしてあげます。膨れがないように面積の比率によって正しい数の脱気筒を設置していきます。
改修用ドレン取り付け
ドレンとはすなわち排水口のことです。特に屋上は、枯葉が泥となってゴミなどもよくたまる場所です。漏水の原因となるので、劣化状況なども加味してこのドレンも新しい改修用ドレンに取り替えます。
ドレンは鉛やFRPで出来ているため、さびることや劣化もほぼありません。
ウレタン流し込み
ここでようやく本命のウレタンを流していきます。ウレタン材は「DSカラー」もしくは「サラセーヌ」という、屋上防水では性能の高い定番の防水材を使用します。ドロドロ状の高粘度の液体が固まるとゴムになるのですが、肉厚をつけるために薄めすぎに注意しながらたっぷりと塗布していきます
立ち上がりは、ダラダラと流れ落ち肉厚がうすくなってしまうため、立ち上がり用、平場用に防水材も種類を使い分けて塗布していきます。
合計2層を塗布しますが、一層目を流し硬化してから2層目を流して塗布します。作業はレベラーという道具やコテなどで塗り広げ、ローラーで厚みが均一になるようにならしていきます。
特に気温が高い時はウレタンの硬化も早く、ウレタンを流す都度に継ぎ目の跡が出てしまうため、広い面積の屋上の場合は作業する職人の人数をおおおくするなどして、継ぎ目のないきれいな仕上げを目指します。
あまりにも気温が高い場合は「硬化遅延剤」や、気温が低く乾燥が遅くれて工程に支障が出そうな場合は、「硬化促進剤」を入れ作業をします。
ウレタンは合計で肉厚の3ミリに仕上げます。
トップコート
ウレタンを紫外線から保護するために、最後の仕上げとしてこのトップコートを塗布します。遮熱性能をもたせるものもあります。ウレタンだけでは雨にぬれると非常に滑りやすくなるため、滑り止めとしてトップコートを塗布します。
さらなる滑り止め効果を発揮する、細かいゴムチップというものを混入させる方法もあります。
ウレタンを長期間持たせる意味でもトップコートは数年置きに塗り替えるようにします。
色はグレーが多いですが、グリーンなどの色も指定できます。