Skip to main content

雨漏りを止める 仕上がりから逆算した防水工事

通常防水工事のブログというと、「どのようにして工事をするか…」 という工事内容についてお話をするのですが、今回は少し視点を変えて工事後の結果から考えた工事についてご説明いたします。

防水工事について

通常、業者が防水工事をご依頼頂いた際には、現場調査をして、その建物に合った防水工事を行い、手順に従って塗布防水の場合、材料を積層し、最後に仕上げ作業をします。
しかし防水工事は、工事を終えた後のことをしっかりとイメージしてから行わないと、ひどい状況をまねく場合があるのです。

 

防水工事をすると、加工した床は雨水をはじくことができます、しかし勾配のつけ方次第で水の逃げ場が無くなり、防水してあるからこそ床に水たまりができてしまうことがあります。
溜まった水は、そのうち防水塗装の効果を弱め、劣化した箇所から壁の内側や床の内部に入り混み、土台を腐蝕させていくことも。
そうならないために、あらゆる結果を想定して、防水工事を行う必要があります。

 

〔関連記事:こちらの現場の工事内容〕

塗装、防水、カバー工法、長尺シートの大規模改修

予測を立てて行う防水工事とは

防水工事は、逆算して考えることが大切です。
水の流れを把握し、床の勾配や、ちょっとした数ミリの段差なども計算に入れます。
しかしこの計算は、ベースになる教本的なものがあるわけではないため、職人の現場経験だけが頼りです。

弊社の防水チームには、僕と同じ名字の松尾という職人がいます。彼は防水チームのエキスパートですので、こちらのお宅の防水工事についていろいろな意見を出し合ってどのように工事を進めるか相談をしました。
僕と彼の経験値をすりあわせることで、今回の防水工事の仕上がり予想を立てたのです。

この建物では、階段部分は、防水塗装とタキステップ(階段用長尺シート)を採用し、そして2階部分(陸屋根)の防水工事としては、いわゆるQV工法と呼ばれる防水工事と長尺シートを併用することになりました。
それでは、どのような対策を採ったか工事内容について詳しく見て行きましょう。

 

階段の防水工事

階段は鉄骨階段の上にモルタルを施してあるタイプで、劣化したモルタルの隙間から雨水が入り混み階段下への雨漏りを引き起こしていました。


そのため、雨漏りを止める為に防水塗装をして、その上にタキステップを貼り込むことに。


本来であれば、階段全体にタキステップを貼り込めば防水効果も期待できるため、防水塗装まではやりません。
しかし今回は、階段の全面にタキステップを貼り込むことはせず、あえて脇をあけて貼り込むことにしました。

 

なぜなら、この階段は雨ざらしなので必ず雨水が階段に溜まります。その雨水を逃がすためにも、シートとモルタル面のわずかな段差を作り、水が階段脇へと流れるようにしたかったのです。
そうすることで、階段に水が溜まることを防ぎます。
またさらにこの簡易側溝は、他にも期待できる効果がありました。

それについては、床面の防水工事の説明にて後述致します。

〔関連記事:こちらの現場の外壁の防水工事〕

外壁の防水工事 防水剤を塗るプラス面とマイナス面とは

 

床面の防水工事

次は、2階部分の床面防水塗装についてです。
通常のQV工法で床面を防水塗装し、さらにお客様のご希望で階段から家の玄関前までレッドカーペットのように長尺シートを敷くことになりましたので、こちらも結果を予想していろいろと工夫しました。
まずQV工法は、QVシートと呼ばれる緑色のシートを防水塗装の前に床面へ貼ります。

 

なぜこの緑のシートを敷くかと言うと、防水層と建物の間に入れることで、建物が動いた際に防水面が引っ張られ切れてしまうことを防ぐためです。(通常効果は別途)

コンクリートの建物などは、地震や寒暖差による収縮や膨脹によって動きがでるため、屋上などの防水の場合、何も対策をせずに工事を行うと、建物が動いた際に塗装面が引っ張られ、表面が切れてしまうことが。

 

そうならないために、建物と防水面を絶縁します。

上から防水材を流し込み、完成です。


さらにこのQVシートは面貼りではなく点貼りとなっているため、防水層の中に入り込んだ水や湿気などを隙間から逃がすことが可能です。防水面の内部に水分が溜まることを防ぎます。
ここまでは、普通の屋上の床面防水工事についてです。
防水工事の看板を掲げているところなら、どの業者もやっているでしょう。

しかし、この防水面の上に長尺シートを貼る場合は、少し工事方法が変わります。
というのは、長尺シートは先ほどの階段部分でタキステップと同様で、防水面のわずかな段差がでるからです。通常防水工事をした際には、床面にゆるやかな勾配をつけて水の流れを作ります。


しかし長尺シートを貼り込むと、水の流れをせき止めてしまうことになるのです。ほんの数ミリのわずかな段差ですが、ここに水が溜まりやすくなります。
また、今回のお宅では最初の下地調整の際に下地職人から床面のわずかな勾配についても報告を受けました。
そこで、それらを加味して防水職人の松尾と相談をしながら、この長尺シートの間に隙間を作り簡易側溝とすることにしたのです。

とはいえ、お客様としてはレッドカーペットのような状態で家までに敷き詰めたいという希望もありましたので、そこはご相談を。
あまりにも側溝の本数が多いのも嫌だけど、水が溜まってしまうのも嫌なので、ぎりぎりの本数で水を逃がすのであればOKと…話し合いの末に合意を頂きました。
結果、先日の大雨の際に2階部分の長尺シートの段差から水を排出し、見事上記の階段を防水工事する際に作っておいた簡易側溝を通して水を逃がすことができたのです。
本当に工夫したことがすべて上手くいって、非常によい仕上がりとなりました。

お客様へのリスク管理

今回のお客様宅の防水工事は、選んだ対策がたまたま上手くはまりましたが、あくまでもこれは運が良かっただけだったと思います。他の現場の場合、実際工事をしてみても見つけられなかった勾配などがあって、うまく水が逃げないこともありました。

僕は、必ずこうした難しい工事をする際に、予測される工事後の良い面も悪い面もすべて話します。
あまりにも「できないかもしれないこと」などをはっきりといいますので、まれにではありますが、「なぜそんなにネガティブなことばかりいうのですか?」とお客様から言われることも…。
しかし、ネガティブなことを言いたいわけでは無く、あくまでもリスク管理の一貫なのです。
どんな塗装工事にもリスクはあります。
それを隠して工事をすることは、お客様に対して不誠実であると僕は思うのです。

家というのは、さまざまな材料がかけ合わさって建てられているため、工事方法に正解というものはありません。
何かをおさめるためには、引き受けなければならないリスクを伴うのです。
雨漏りに関しても、僕はほとんどの場合「止まらないかもしれません」とお伝えします。
なぜなら雨漏りというのは、原因が多数あり本当に難しい補修工事だからです。
しかし、お客様に「止まらないかも」とお伝えしながらも、僕の心の中では「絶対止めてやる」と決意を固めています。
しかし、それを口には出せません。
自分の仕事に責任を持っているからこそ、100%確実なことしか言えないのです。

たかが水たまり、されど水たまり

今回の工事は、長尺シートと防水塗装のハイブリッド工事でしたが、無事水を散らすことができ雨漏りから家を守ることができました。
長尺シートに溝を作り、壁際に逃げた水をさらに階段へと流したことで、予測通りに水の排出ができたのです。下記が実際に簡易側溝を水が流れる様子となります。

本当に上手くいってくれたので、ホッとしました。

長尺シートの上に溜まった水は、そのうちシートの中に浸透します。
それでは、せっかく貼ったシートが無駄になるどころか、シートで覆ってあることでさらに水の逃げ場がなくなり、より内部を腐らせるなどして雨漏りを加速させるでしょう。
だから複雑な工事こそ、工事後を見据えたいわゆる工事の逆算が必要となるのです。

〔関連動画:こちらの現場の工事後の様子〕

実は、今回の防水工事後…僕は何度か現場に足を運びました。
自分の仕事にきちんと向き合うために、しっかりと結果を受け止めたかったのです。


奇跡的にうまくいきましたが、ほとんどの場合は上手くいかず何度もトライアンドエラーの繰り返しになることも。
防水工事は材料だけ揃えて、ただ貼り込んだり塗ったりすれば雨漏りを止めることになるわけではありません。
家の状態や、形状、環境あらゆることを踏まえて、工事後の状況を予測することで初めて、お客様が望む『雨漏りを止める』という防水工事ができるのです。

防水工事を依頼する際には、さまざまな状況を予測した上で工事をする業者を選びましょう。
逆算から導き出す工事こそ、理想的な防水工事といえるのです。

〔関連動画:雨漏りの悩みから解放された3度目の屋上防水〕