渋谷区で施工したウレタン塗膜防水密着工法の現場の様子を、写真とともに詳しく解説いたします。防水工事は、建物を雨水から守る重要な役割を担っています。各工程の専門的な技術要素、建物環境や構造的背景、そして下地や既存防水層との関連性について、掘り下げて解説していきます。
1.【施工前】既存ウレタン塗膜防水の状態
今回の現場は、既存のウレタン塗膜防水が施された屋上でした。まず、施工前の現場状況を確認することが重要です。
既存の防水層の状態を詳細に調査し、劣化状況、ひび割れ、膨れ、剥がれなどを把握します。
写真から、表面の劣化や色あせが見られますが、これは紫外線や風雨による経年劣化が原因です。下地の状態を把握するために、目視調査だけでなく、触診や打診調査も行い、より詳細な情報を収集します。既存防水層が、ウレタン系か、アクリル系か、FRP系かなどを確認し、適切な下地処理の方法と使用材料を選定します。
既存防水層がウレタン系の場合、再塗布が可能か、撤去が必要か判断し、既存防水層と新規防水層の相性を考慮する必要があります。ALCパネルが下地の場合は、パネルの吸水性やたわみを考慮し、水勾配や防水層の仕様を検討します。
既存の防水層が、密着工法か、絶縁工法か、保護層があるかなどを確認し、適切な改修工法を選定します。これらの調査結果に基づいて、適切な防水工事の計画を立てることが、高品質な防水層を形成するための第一歩です。
2【高圧洗浄】下地を徹底的にクリーニング
今回の現場では、別階でFRP防水が施工されていた箇所を例に高圧洗浄の様子を撮影しました。今回は漏水箇所がメインのため、この部分はトップコート(アトレーヌTOP仕様)でのご提案となりました。
高圧洗浄は、下地表面の汚れ、コケ、藻類、古い塗膜などを除去する重要な工程です。今回は、近隣への配慮から飛散防止養生は行わず、水圧を調整して洗浄しました。、雨水や土埃、排気ガスなどで汚れやすいため、丁寧に洗浄します。
洗浄後、下地が十分に乾燥していることを確認します。水分が残っていると、防水層の密着不良や膨れの原因になります。洗浄水が、排水溝や雨水枡にスムーズに流れ込むように、排水経路も確認します。
3.【プライマー塗布】下地と防水層を強力に密着
この工程では、下地と防水層の密着性を高めるためのプライマーを塗布します。
今回は、既存の塗膜防水下地に対して、「層間プライマー」を選択しました。プライマーの選定は非常に重要で、下地の種類によって適合するプライマーが異なります。既存の塗膜防水下地には、層間プライマーを使用することで、既存防水層と新しい防水層との密着性を高めます。
プライマーを塗布することで、下地の吸水を抑制し、防水材の性能を最大限に引き出すことができます。プライマーは、ローラーや刷毛を使用し、均一に塗布します。塗り残しがないように、丁寧に塗布することが重要です。プライマーの塗布量は、メーカーの仕様に従い、過不足がないように注意します。
プライマーが完全に乾燥してから、次の工程に進みます。乾燥時間は、気温や湿度によって異なるため、注意が必要です。ALCパネルなどの吸水性の高い下地の場合、プライマーを2回塗りする必要がある場合があります。金属下地や樹脂下地の場合は、専用のプライマーを選定する必要があります。プライマーには、一液型と二液型があり、用途や下地の種類によって使い分けます。
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4.【ガラスクロス敷き込み】亀裂を補強し、防水層を強化
写真④:ガラスクロス敷き込みの様子
今回の工事の最大のテーマは、**既存防水層に見られた亀裂からのエフロレッセンス(白いシミ)でした。そこで、3mmメッシュのガラスクロスを敷き込むことで、下地の亀裂を補強し、防水層の強度を高める提案を採用しました。
ガラスクロスは、防水層の補強材として使用され、ひび割れや亀裂の発生を抑制する効果があります。今回は、3mmメッシュのガラスクロスを使用することで、より高い補強効果が期待できます。防水材を塗布する前に、下地にしっかりと密着させます。
ガラスクロスが浮き上がらないように、ローラーや刷毛で丁寧に押さえつけます。重ね幅は、メーカーの仕様に従い、適切に設定します。立上り部や入隅部にも丁寧に貼り付け、防水層をしっかりと補強します。種類は、厚さやメッシュの粗さによって異なり、用途や下地の状態によって使い分けます。ガラスクロスの代わりに、不織布を使用する場合もあります。
5.【ウレタン防水材一層目塗布】均一な厚みを確保
ここでは、ウレタン防水材の一層目を塗布します。ローラー、ポリベラ、ゴムベラ、刷毛を駆使して、均一な厚みを確保するように丁寧に施工します。
ウレタン防水材は、柔軟性と伸縮性に優れ、建物の動きにも追従するため、防水層のひび割れを防ぐ効果があります。一層目の塗布は、下地にしっかりと密着させることを意識して行います。ローラーや刷毛を使用し、隅々まで均一に塗布します。
特に、立上り部や入隅部は、刷毛を使い丁寧に塗り込みます。ポリベラやゴムベラを使用し、塗布厚さを均一にします。一度に厚く塗布すると、乾燥不良や膨れの原因になるため、規定の厚さを守って塗布します。ウレタン防水材には、一液型と二液型があり、今回の現場では二液型ウレタンを使用しています。二液型ウレタンは、主剤と硬化剤を混合して使用するため、混合比率や攪拌方法に注意が必要です。
気温や湿度によって硬化時間が異なるため、作業時間や乾燥時間に注意する必要があります。ウレタン防水材には、溶剤系と無溶剤系があり、臭気や環境への配慮が必要な現場では、無溶剤系ウレタンを使用します。防水材の塗布量や乾燥時間は、メーカーの仕様に従い、適切な施工を行う必要があります。
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6.【ウレタン防水材二層目塗布】より平滑で強靭な防水層を形成
一層目と同様に、ウレタン防水材の二層目を塗布します。今回は、金鏝、ローラー、刷毛を使用し、一層目と同様に均一な塗布を心がけました。写真を見るとわかりますが、「塗る」というよりは「まく」という表現が近いかもしれません。
二層目の塗布は、一層目の塗りムラを修正し、より平滑な防水層を形成するために重要です。金鏝を使用することで、より平滑な仕上がりになります。床材なので耐摩耗性も考慮し、規定の厚さで仕上げます。ローラーや刷毛を使用し、隅々まで均一に塗布します。特に、立上り部や入隅部は、刷毛を使い丁寧に塗り込みます。
二層目を塗布することで、防水層の厚みを確保し、防水性能を向上させます。一層目と二層目の間には、適切な乾燥時間が必要です。乾燥時間は、気温や湿度によって異なるため、注意が必要です。二層目を塗布する際には、一層目の防水材の状態を十分に確認し、異物や汚れがないことを確認します。二層目には、耐候性や耐摩耗性に優れた材料を選ぶことで、防水層の耐久性を高めることができます。ウレタン防水材の塗布厚さの管理は、ウェットゲージなどを使用し、適切な厚さになっているか確認します。
7.【トップコート塗布】防水層を紫外線や雨水から保護
仕上げに、トップコートを塗布します。缶底に養生テープを貼り、下に痕がつかないように配慮します。鏡面のような仕上がりを目指しました。ウレタン防水層を紫外線や雨水から保護し、防水層の劣化を防ぐ役割があります。トップコートを塗布することで、防水層の耐久性を向上させることができます。耐候性、耐摩耗性、防汚性などの機能を持たせたものがあります。
今回は、非歩行箇所のため、「絹ごし豆腐」のような滑らかな仕上がりを目指しました。軽歩行箇所の場合は、滑り止めとしてゴムチップを混入します。トローラーや刷毛を使用し、均一に塗布します。塗り残しがないように、丁寧に塗布することが重要です。塗布量は、メーカーの仕様に従い、過不足がないように注意します。
完全に乾燥してから、養生を撤去します。トップコートには、遮熱効果を持たせたものもあり、屋上やベランダの温度上昇を抑制する効果が期待できます。トップコートは、数年ごとに塗り替えることで、防水層を長持ちさせることができます。
8.【施工後】美しい防水層が完成
今回の現場では、仕上げ色にグレーを選択し、美しく耐久性の高い防水層が完成しました。
平滑で美しい防水面は、防水工事の品質の高さを物語っています。
ウレタン防水材は、柔軟性と伸縮性に優れているため、建物の動きにも追従し、ひび割れを防ぎます。適切な下地処理と丁寧な施工により、長期にわたり建物を雨水から守ることができます。防水工事は、建物の寿命を左
右する重要な工事なので、信頼できる業者に依頼することが大切です。定期的な点検とメンテナンスを行うことで、防水層をより長持ちさせることができます。防水工事の完了後には、防水層の検査を行い、不具合がないことを確認します。
今回の施工は、ウレタン塗膜防水密着工法でしたが、建物の構造や状態によって、様々な防水工法が選択されます。お客様の要望や予算に合わせて、最適な防水工法を提案することが、防水工事のプロとしての重要な役割です。
ウレタン塗膜防水密着工法の各工程を写真付きで詳しく解説しました。防水工事は、建物を雨水から守るだけでなく、建物の寿命を延ばすためにも非常に重要な工事です。
各工程の専門的な技術要素、建物環境や構造的背景、そして下地や既存防水層との関連性を理解することで、より高品質な防水工事を実現できます。
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