施工の見どころ
東京都目黒区に建つRC造のマンションにて、長年雨漏りに悩まされていたオーナー様よりご依頼をいただき、屋上防水工事を実施しました。経年劣化が進んだ屋上の防水性能を回復させるため、AGCの高性能ウレタン防水材「サラセーヌ」を使用し、職人の手で一工程ずつ丁寧に施工を行いました。以下、全工程の様子をご紹介いたします。
工事前調査
工事前の屋上には、かつて看板などが設置されていたと思われる架台の基礎が残されていました。その金属部には撤去時の名残があり、そこからの雨水の侵入も懸念される状況でした。

防水層全体には、紫外線や風雨の影響によるひび割れや剥離が見受けられました。すでに防水層としての役割を果たせていない状態で、既存の脱気筒も機能が不十分な様子。オーナー様からは「数年前から雨漏りが気になっていた」とのご相談もあり、早急な防水対策が必要とされていました。
下地処理
工事に先立ち、まずは作業スペースを確保し、屋上全体の清掃を実施。特に架台まわりの埃や付着物を丁寧に除去しました。その後、高圧洗浄機を使って屋上の既存防水層の汚れや浮き部分を徹底的に洗浄。これにより新しい防水材との密着性を高める準備が整いました。

続いて、プライマーの塗布に進みます。今回使用したのは、既存防水層との相性を考慮した「層間プライマー」です。

これは既存層と新設層との間の密着不良を防ぎ、施工後の剥離や浮きを防ぐための重要な工程です。
また、屋上の壁つなぎ金具と笠木の間には黄色の保護材を挟み、安全に配慮しながら作業を進めました。こうした細部への配慮が、事故や不具合の防止につながります。
メッシュ補強
次に行ったのは、立ち上がりや入隅・出隅といった構造的に動きの大きい部分への補強処理です。ここには「サラセーヌT SD-KK30T」という3mm厚の高強度メッシュシートを貼り付けました。

このシートは長繊維不織布に千鳥格子状の孔が空いており、通気緩衝性を持つ特殊素材。建物の動きに追従する柔軟性があり、これを用いることでクラックの再発を防ぐ効果が期待できます。

シートの貼り付けはゴムベラを使用し、空気が残らないように丁寧に施工。その後、ウレタン材を塗布してメッシュを完全に包み込みます。均一な貼り付けが求められる繊細な工程ですが、職人の手作業により丁寧に仕上げられました。
防水層の形成
いよいよ防水層の本体施工に入ります。今回採用したのはAGCのウレタン防水材「サラセーヌK」です。ローラーで均一に塗布していくこの工程では、まず1層目で先ほどのメッシュをしっかり押さえ、2層目で規定の厚みを確保します。

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サラセーヌは、柔軟性と耐久性を兼ね備えた材料で、特に改修向けの屋上防水において高い信頼性を持ちます。今回の現場では、湿気を外部に逃がす通気性も考慮し、部分密着型の通気緩衝工法を採用しました。

通気性と密着性を両立することで、防水層内部の水分が膨張して防水層を押し上げる「膨れ」のリスクも軽減されます。
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仕上げと脱気筒処理
防水層の塗布が完了したあとは、紫外線や風雨から守るためのトップコートを塗布しました。この仕上げ層があることで、防水層の耐久性はさらに向上します。

また、既存の脱気筒は状態を確認したうえで再利用することにしました。脱気筒の役割は、下地内の湿気を外部へ排出し、膨れを防ぐことです。再利用にあたっては、機能性に問題がないかを慎重に見極める必要があります。
排水の要となるドレンまわりも丁寧に清掃し、防水材で巻き込むように処理を施しました。排水が滞れば水たまりの原因になり、防水層への負荷が増すため、ここも重要なチェックポイントです。
特殊処理
屋上に残された架台の基礎部分には、ウレタン防水を施し、金属と下地の取り合いにも対応しました。こうした異種素材の取り合い部は、微細な隙間から水が浸入しやすいため、専用の金属プライマーを用いて下処理を行い、上からウレタン材で巻き込むように防水処理を実施しました。

目に見えない細部にも配慮を徹底することが、長期的な防水性能の鍵となります。
検査
施工完了後は、現場担当者による入念な検査を実施しました。メッシュが完全に隠れているか、防水層が規定の厚みに達しているか、排水まわりの処理に不備はないか、ひとつひとつ丁寧に確認しました。

壁つなぎ金具の浮きに関しても、安全確保のために黄色の保護材を設置し、二重の安全対策を講じています。
今回の屋上防水工事は、長年の雨漏りを解消するだけでなく、建物全体の寿命を延ばす重要なメンテナンスとなりました。サラセーヌを用いた高性能な防水層の形成、適切な下地処理、そして細部への徹底した配慮を行いました。