施工の見どころ


東京都世田谷区にある、築28年を迎えた鉄筋コンクリート造3階建てのマンション。その屋上にて、経年劣化による漏水リスクに備えた防水改修工事を実施しました。
本施工では、既存の塩ビシート防水を撤去し、下地を補修。最終仕上げとしてウレタン塗膜防水「サラセーヌQV-KK50Tフッ素工法」を採用しています。
ウレタン防水の特長は、柔軟性と密着性に優れ、複雑な形状にも施工が可能な点です。しかし、仕上がりの性能は、工程ひとつひとつの精度に大きく左右されます。
高圧洗浄 ― すべてのスタートは“徹底洗浄”から
まず行うのは、屋上平場と天窓周辺の高圧洗浄。長年の風雨により付着した泥やコケ、ホコリを完全に除去します。これを怠ると、防水材の密着不良が起きてしまい、剥がれや漏水の原因に。

築28年という年月が蓄積した汚れは頑固ですが、プロの手で丁寧に洗い上げ、下地のコンディションを最適な状態に整えます。
プライマー塗布 ― 異素材を一体化させる“見えない接着剤”
立ち上がり部の金属やステンレス部分には「PE-670(金属プライマー)」、平場の既存シート部には「P-60(層間プライマー)」を塗布。

金属には赤い、平場には青いプライマーを使い分け、それぞれの素材に最適な密着性を確保します。

この“ひと手間”が防水層の耐久性に直結するため、手を抜くことはできません。
既存不具合の補修 ― 機能していない通気層と老朽化した脱気筒
既存の防水層を確認すると、通気層の切れやジョイント不良、さらに脱気筒の劣化が発覚。これでは防水どころか、内部に湿気が滞留してしまいます。

通気層は丁寧に補修し、エンドテープで端末を強化。脱気筒は完全に撤去し、設置穴をモルタルで平滑に補修しました。
笠木部の処理 ― 雨水が集まりやすい“要”の部位に集中対策
タイル面と屋上側で異なるプライマーを塗布し、それぞれの素材に応じたシーリング材(変成シリコン・ポリウレタン)を充填。ムラなく押さえ込むことで、美しさと性能を両立させました。

雨水の侵入を防ぐ「最前線」ともいえる場所だからこそ、素材ごとの特性に合わせた対応が必要です。

QVシート貼付 ― 通気層を正しく“再生”させる工程
ここから本格的な通気層再構築へ。防水層下の湿気を逃がす「QVシート」を碁盤の目状に貼付し、ジョイント部には専用テープを使用。縦横の整列と重なり幅に注意を払いながら、通気機能が均等に働くよう施工します。

さらに、ジョイント部にはウレタンを“捨て塗り”してから本塗りに備えます。
天窓の補修 ― 雨の直撃を受ける“脆弱箇所”への配慮
天窓・屋上ガラス面と金属の取り合い部には、バックアップ材を挿入し、3面接着を防止。これによりシーリング材の性能が最大限に発揮されます。

仕上げはプライマー塗布からシーリング材の充填、ヘラ押さえまで。さらに人工的に「逃げ道(排水口)」を設け、万一の水の滞留も回避。

補強クロス貼付 ― 異素材接合部の“耐久性の要”
金属と防水材の接合部には、立ち上がりを150mm以上重ねて補強クロスを貼付。素材の収縮・膨張の違いによる割れを防ぎます。

このクロスが、ウレタン防水の弱点を補う「影の主役」です。
脱気筒の新設 ― 目に見えない“湿気の逃げ道”をつくる
通気層の湿気を外部に逃がすため、脱気筒を新たに設置。防水層を貫通させて設置することで、下地からしっかりと湿気を排出できる構造にします。

さらに、脱気筒周囲にも補強クロスを貼付。万全の備えを施しました。
ウレタン塗布1回目 ― 平場と立ち上がりに厚みと密着を
いよいよ防水材の本塗りへ。立ち上がりには補強クロスが隠れる程度、平場には捨て塗り上から縦横方向に均一に塗布し、基礎防水層を構築します。

この1層目がムラなく仕上がっていなければ、次の層に問題が生じます。

ウレタン塗布2回目 ― 均一な厚みを作る“勝負の工程”
2層目では厚みのバラつきが出ないよう、平場・立ち上がりともに慎重に塗布。

細かな凹凸もこの時点で修正され、防水性能がより安定します。

トップコート仕上げ ― UVや摩耗から防水層を守る最終防衛
最後に、トップコートを塗布。耐候性に優れたフッ素系仕上げ材を使用し、紫外線・風雨から防水層をしっかりガードします。

均一に塗り上げることで、美観も防水性能も長期間にわたって維持されます。
天窓・ガラスクリーニング ― 最後まで“見える品質”を
施工完了後、天窓や屋上ガラス面を丁寧にクリーニング。工事中に付着したホコリや跡を残さず、清潔で整った仕上がりを実現します。

今回の施工では、築28年のRCマンション屋上に対し、徹底した調査と補修を行い、ウレタン塗膜防水「サラセーヌQV-KK50Tフッ素工法」を用いて防水層を再構築しました。
単なる塗り替えではなく、既存の通気層や脱気筒の不具合、下地の劣化といった“目に見えにくい問題”に丁寧に向き合い、素材ごとに最適なプライマーやシーリング材、補強クロスを使い分けることで、長期にわたる防水性能と美観を両立しています。