施工の見どころ
既存のゴムシート防水からウレタン塗膜防水へ切り替えた江東区にあるビルの屋上防水改修工事の施工事例をご紹介します。建物の老朽化にともない防水層に劣化が見られ、通気緩衝工法による改修が最適と判断されました。
施工前：既存ゴムシート
既存の屋上はゴムシート防水が施されていましたが、経年劣化が進行。排水溝周辺にはテープ補修の跡もあり、防水機能の限界が見てとれました。シートが膨れたり端部が浮いている箇所もあり、雨水の侵入リスクを抱えた状態でした。
既存防水層の撤去
まずは既存のゴムシート防水を撤去する作業からスタート。アルミ製の押さえ金物をハンマーやバールで丁寧に取り外し、立ち上がり部分のシートも慎重に撤去していきます。
特徴的なのは、笠木の下約150mmの既存防水層をあえて残している点です。これは新旧防水層の接続強度を高め、将来的な雨水侵入を防ぐための工夫です。
下地調整
撤去後のコンクリート面には凹凸やゴミ、細かな亀裂などが残るため、下地を平滑に整える工程を行います。この調整により、後に施工する防水材の密着性が高まり、仕上がりの品質と耐久性が確保されます。下地の水分やほこりを除去することも、膨れや剥離の防止において非常に重要です。
ドレン処理と清掃
雨水を排出するドレンまわりは防水層にとって要の部分。
ひび割れ箇所には弾性材を充填し、周囲のゴミや突起物をケレン等で徹底的に除去します。仕上がりをフラットに保つためには、こうした地道な処理が欠かせません。
改修ドレン取り付け
新たに設置したのは鉛製の改修ドレンです。既存の排水口と新しい防水層の接続を確実に行う役割を担っており、ジャバラホースを使うことで劣化した配管の動きにも追従し、漏水リスクを抑えます。
排水機能と防水性を同時に高める重要な工程です。
入隅シーリング
平場と立ち上がりの接点である「入隅」部分は、建物の動きによって応力が集中しやすい場所です。
ここに高弾性のシーリング材を充填し、応力を緩和します。ひび割れや防水層の破断を未然に防ぐ処理を施します。
プライマー塗布
下地と防水材をしっかり接着させるため、全体にプライマーを塗布します。
プライマーは接着強度を高め、後に塗布する防水材の性能を最大限に引き出すための要です。塗り残しなく均一に塗布することが求められます。
QVシート貼り
通気緩衝工法の要となるQVシート（X-1相当）を全体に貼り付けます。
このシートは下地に残った湿気を逃し、膨れを防ぐと同時に、建物の動きによるクラックを吸収する役割を果たします。継ぎ目には専用のQVテープを貼って隙間を塞ぎ、通気性を保ちつつ防水性も確保します。
ガラスクロス貼り
立ち上がりや入隅、QVシートまわりなど応力の集中しやすい箇所に、ガラスクロスを貼って補強します。
このクロスが塗膜の厚みの基準にもなり、必要な強度を確保しながら美しい仕上がりを実現します。特に立ち上がり部では、粘度の高いウレタン材をゴムベラで丁寧に塗布します。
脱気筒
防水層内にこもる湿気を屋外へ排出するため、脱気筒を設置します。
湿気はQVシートを通じて誘導され、この脱気筒から抜ける構造。周囲はガラスクロスでしっかり補強され、破断のリスクを防いでいます。
ウレタン塗膜防水
いよいよ主防水材であるウレタンを塗布します。1層目に「サラセーヌK材」をローラーと金ゴテで均一に施工します。
乾燥後、2層目を重ね塗りすることで、充分な膜厚と強度を確保します。
二重構造によって、耐候性・耐久性の高い防水層が形成されます。
トップコート塗布
最後に、紫外線や雨風、排気ガスなどから防水層を保護するトップコートを施工。
6インチローラーで丁寧に塗布し、美観と耐久性を両立させた仕上げとなりました。
施工後
既存の劣化状態に応じた適切な撤去処理から、最新の通気緩衝工法を用いたウレタン防水の丁寧な施工まで、一貫した品質管理のもと工事を進めました。
防水改修工事は、建物の寿命と安心な生活を支える大切なメンテナンスです。
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