施工の見どころ
世田谷区にあるマンションの屋上防水の改修事例です。既存の防水層は非常に薄く、塗膜のような簡易仕上げの状態でした。そこで、既存層を撤去せずに施工でき、下地の影響を受けにくい「機械固定工法」を採用。絶縁シートと塩ビシートを組み合わせ、コストを抑えつつ長寿命の防水層を形成しました。
既存防水の確認
調査の結果、既存防水層は劣化が進み、ひび割れが多発していました。下地補修では十分な効果が得られないため、絶縁シートを用いることで下地を選ばない安全な施工方法を採用しました。
笠木ウレタン塗膜防水施工
屋上の外周部(笠木)は塩ビシートではなく、柔軟性の高いウレタン塗膜防水を採用。異素材との取り合いを考慮し、プライマー処理や段差調整を丁寧に行いました。

顎テープ先行施工
立上り部の端部に「顎テープ」を先行して貼り、水の侵入を防止します。塩ビシートとの取り合いを確実に保つため、シートの張り具合を細かく調整しました。
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鋼板取付
塩ビシートを機械的に押さえるため、屋上端部にL型鋼板を設置。これにより、強風時でも剥離しにくい構造となります。端部の形状に合わせて加工を行いました。

絶縁シート敷設・ディスク固定
絶縁シートを全面に敷設し、30cm間隔でディスクプレートを固定。端部にはL型鋼板を併用し、安定した支持構造を確保しました。下地を選ばない機械固定工法の強みが活かされています。

シート引き込み
塩ビシートを敷設し、5cmの重ね幅を確保しながら仮固定しました。重ね部分が均一でないと溶着が不十分になるため、位置を微調整しながら慎重に配置。敷設後は全体の張り具合を確認し、たるみや歪みを残さないよう仕上げました

シートジョイント部溶着液施工
ジョイント部分には専用の溶着液を塗布し、すぐにローラーで圧着。汚れや湿気を除去した上で塗布・圧着を連携して行い、強固な密着を実現しました。

シートジョイント立上り端部溶着
立上り面は垂直方向のため難易度が高く、温度管理を行いながら溶着液でしっかり密着。浮きを防ぎ、長期的な防水性を確保しました。

IH融着
一部ではIH(誘導加熱)を用いた溶着を採用。均一な熱でシートを一体化させ、ライスターでは届きにくい箇所も確実に接合しています。

シート端部液シール
端部は雨水侵入の危険があるため、塩ビ専用シーリング材のエクシールで処理。プライマー塗布後、ヘラで均一にならし、柔軟で強固な防水層を形成しました。

入隅部ライスター施工
床と立上りの接点入隅である入隅部は漏水リスクが高いため、ライスター(熱風溶着機)で確実に溶着。角部までしっかり圧着し、隙間のない仕上がりに整えました。

ドレン施工
雨水が集中するドレンまわりは特に慎重に施工。清掃後に専用ドレンシートを溶着し、周囲をエクシールで密閉。排水機能を確保しつつ防水性能を高めました。

シートジョイント仕上げ確認
溶着後のジョイント部をすべて点検。浮きや隙間をチェックし、必要箇所に再溶着を実施。細部まで確認することで長期的な防水性能を保証します。

シート端部液シール仕上げ
全ての端部に再度液シールを施し、仕上げと補強を兼ねた防水膜を形成。微細な隙間も丁寧に埋め、美観と機能を両立しました。

顎下プライマー塗布
端部シールの前にプライマーを塗布し、密着性を高める下処理を実施。乾燥時間を管理し、次工程への精度を確保しました。

顎下シール・ライスター溶着
顎下や臭気筒まわりにシールを施工し、ライスターで熱溶着。細部まで気密性を確保し、経年変化にも耐える仕上がりにしました。


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施行を終えて
全工程完了後、重ね幅・溶着状態・排水経路を細部まで点検し、施工完了となりました。

今回採用した機械固定工法は、下地を選ばず施工が可能で、改修性・耐久性にも優れています。ディスク固定による強固な保持力と、溶着液・ライスターを使った確実なジョイント処理により、長期間建物を守る高品質な防水層が完成しました。
