目次
前回のブログでお話しました、世田谷区のお客様宅工事の続きとなります。
関連記事 前回のブログ
今回は防水工事の下地準備についてのお話です。
この下地準備ですが、メーカーの説明書通りにやればいいかというとそうではありません。
なぜ説明書通りではいけないのか、そしてプロの防水工事の下地準備がいかに大切かということをご説明致します。
大手では無いからできる塗装工事
私たち塗装職人は、社長が塗装の職人で、スタッフの多くも職人といういわゆる街の塗装業者です。
そのため、大手のように営業の人間と、現場の人間が別ということがありません。
僕は見積もり担当・営業ですが、現場監督もしますし、職人とのスケジュールや工事内容の確認も致します。
だからこそ、大手にはできないお客様の思いを現場にダイレクトに伝える工事が可能です。
そして、さらに弊社のモットーである『職人が主体の会社』の通り、僕ももともとはゼネコンを始めさまざまな工事に携わってきており、それゆえに工事のことだけでなく材料のことや職人のことに経験と知識があります。
こうした前提があることによって、これからお話しする綿密な下地工事をすることができるのです。
下地準備工事の大切さ
こちらの屋上は、新築後に1回防水工事が行われていました。
階段の踊り場部分にある、ガラス屋根は漏水が確認されており、高圧洗浄をかけながら補強の必要性について再度チェックを。
また屋上には、通気緩衝シートを敷いた上にウレタン塗膜防水の工事が施してありましたので、脱気筒も設置されています。それらを考慮して、今回は防水工事の計画を立てました。
この写真は脱気筒を剥がしてみたところです。メッシュの下に青色のマットが見えますでしょうか。
この青い色味から、コスミック製(ダイフレックス)を使用していることが分かります。
そこで、今回はサラセーヌの通気緩衝シートであるQVシートを使って、接着させながら下地にたまった水分を抜き、その上にウレタン塗膜防水工事をすることによって、工事をすることとなりました。
ここで大切なのは、笠木と床面、立ち上がり部分の補強です。
というのも、こちらの笠木部分は前回のブログでもご紹介しましたが、ステンレスが使用されています。
ステンレスと床材は伸縮率が違うため、二つを接続しているシーリング部分に断裂が起きていました。
関連動画 ピカピカ肉厚のウレタン屋上防水
その断裂部分から雨水が浸入し、雨漏りへとつながっていたのです。
そこで今回は、このステンレスの笠木部分と床からの立ち上がり、そして床部分が一体となるような工事をしたいと思いました。
下地でこれらの箇所をうまくつないで、防水工事をすることで、雨水の侵入を防ぐ。また、最後に行うシーリング工事も、下地をしっかりと作り込めば断裂は少なくなります。
防水工事というのは、下地工事が甘いと弊害がおきるものです。
そして防水工事を安くしようと思った時に、一番手が抜けるのもこの下地準備工事といえます。
また、業者によっては「メーカーの説明にあるとおりにやりました」と言うところもありますが、実はこうした再塗装の場合、メーカーの説明のままやったのでは上手くいかないこともあるのです。
というのも、今回の現場のように2度目の再塗装の場合には下地がすでにメーカーが想定する状態と違います。
スタートラインが違えば、対処方法が違うことは誰の目にも明らかなことです。
これらのことから、下地の状態や材料の特性などを見て、あらゆる方向から防水工事を考える必要があります。
とはいえ、メーカーの用法を守らず施工すれば、メーカー保証がつきません。
ですので、なんとかメーカー保証をつけながら現場にあった対応ができないか模索するためにも、現場の経験値がなによりも必要になってきます。
もちろん状態がひどい場合には、メーカー保証よりも現場を納めることを重視する場合もありますが、塗装の土台とも言える下地にできるだけの工夫をするのが塗装職人流なのです。
工事で気をつけたこと
ではここから、実際の工事についてです。
全体を高圧洗浄し、掃除をしたら今回はまずステンレスの笠木にヤスリなどで傷をつけます。これはプライマーを食わせるためです。(面粗し)
ケレン作業を行い次に金属用のプライマー(写真の赤色部分)を塗ります。
立ち上がり床面には青色のプライマーを塗ります。
こちらは床面用のもので、金属プライマーとは種類が違うものです。
種類の違うプライマーを使い分けることで、防水剤を撒いた際にはすべてを一体化させて覆うことができます。
ちなみに、プライマーの上には床面には通気緩衝シート、笠木には補強布を貼りここでもそれぞれの特性にあった材料で下地工事をすすめることが大切です。
さらに、室外機の足部分などもあげ床面に均等に下地処理をおこないます。
実はこのプライマーや補強布には、良いところもあれば癖や副作用がある場合もあり、それらを熟知して使うことが何よりも大事です。
しかもこれらの癖や副作用は、メーカーではあまり実感できていない場合があります。
現場で使っている職人だからこそわかる癖や副作用。これらをしっかりと踏まえることによって、より材料の効果を引き出して使うことが可能になります。
関連記事 通気緩衝のシート貼り
脱気筒の処理
さて、ここで一旦脱気筒の処理についてもお話したいと思います。
こちらの屋上にある脱気筒は、マットにコスミック製「が使われていました。
こちらは不織布とブチルゴムテープをミックスしているもので、独特のマットとなっています。
しかし、この通気緩衝シートであるはずのコスミック製マットの後ろに水がたまってしまっていました。
それは、マットに切れている部分があった為です。突き付けで貼り合わせ補強しなければなりません。
笠木部分には補強布+塗装の膜厚で対処するのに対して、床面は通気緩衝シートでの補強、通気、を行い脱気筒の設置も必要です。
(マット同志つなぐジョイントテープの施工という手抜きがしてあった為)
さらに、この脱気筒ですが、今現在あるものは前回の工事の際に水を抜くものだったため、今回は撤去し埋める必要があります。
というのも、新築時の床面の上に塗装した際に出る水を抜くための脱気筒だったため、工事から10年以上たったいま、すでに十分な水分が抜けたことが予想されるからです。
そして、このまま脱気筒を塞がずにいると、余計な穴を下地に貫通させていることになってしまいます。
そこで旧脱気筒は撤去をし、通気緩衝シートとセットとなる新しい脱気筒を今回の工事で建てることに。
脱気筒で湿気を抜くのにプラスして、今回サラセーヌのQVシートは自着をします。
そうすることで、塞ぎきっていない裏地はあみだくじ状に隙間があくため、水が通る隙間ができたことで脱気が可能となるのです。
前回はかなり多くの脱気筒があったのですが、今回はきちんと水の通り道なども考え最小限にしました。
こうすることによって、必要なものをチョイスしながら、不必要な費用を使わずに工事をすることが可能です。
関連動画 通気緩衝工法
今回行った下地工事の全ては、メーカーのHPには載っていません。
メーカーの説明、現場での実際の状態をすべて踏襲して導き出した工事です。
工事費用は必要な箇所についてはかかります。
しかし、後から手間も費用もかかってしまうことだけは避けるように、あらゆる状態を装置して予防策を打ちながら施工しました。
塗装工事はオーダーメイド
塗装工事をする時に、「一つとして同じ状態の家はない」ということがよく言われます。
新築の家だとしても、建てた大工や職人によって工事の始末が違い、ちょっとした方角や環境の違いで差がでるのです。たとえ集合住宅として建てられていても、あちらの家は雨漏りがないのに、こちらは大変な雨漏りに悩まされているといったこともおこるほどです。
さらに、塗装工事は1回目、2回目でも行える工事は大きく変わってきます。
例えば、1回目の塗装工事をしっかりとした塗装業者に依頼し、かけるべき費用をかけておこなった工事の場合と、1回目も安さ優先で行った工事の場合では下地の状態が大きく違うため、家の傷み方にも違いがでます。
この土台の差で、2回目の工事の費用…そしてできることできないことが変わってくるのです。
だからこそ、塗装工事をする際には細かな診断と、診断結果によって対応を考えたオーダーメイドの工事が必要となります。
今回の防水工事の下準備についても同じですが…不具合をたしかめて、それらを上手く収めるためにはどういった方法があるのか考える。
これにはマニュアルはありません。
そして、良い製品を使っても対価が得られないことにも繋がります。
僕はたまに、お客様からのオーダーを否定することがあります。
もちろん、お客様がおっしゃる通りに工事をすれば、お客様としても気持ちよく工事を見守ることができるでしょう。
しかし、家というのは複雑なため、ネット上で調べた家の状態やメーカーが推奨する塗装方法だけでは補うことができないのです。
だからこそ、この家に合う正しいものを提案します。
お客様の中には、気分を害する方もいらっしゃいますが、お客様が言っているからといって間違った工法を進めるのは、無責任なことだと僕は思うのです。
僕は防水のプロということで、ブログも書いています。
だからこそ、しっかりとお客様の家を守るための提案をしたいと思うのです。
お客様には、いつも良い選択をしてほしいといつも願っています。
相見積もりの際には、どうかこうしたフルオーダー工事のところと見積もりを見比べて下さい。
工事をオートマ化しているところや、作業を省いているようなところと見積もりや工事内容を比べても、それは比較になりません。
400円のすき焼き丼と4000円のすき焼きコースを比べて、どちらが安いかどうかを比べる人はいませんよね。
それと同じです。
比べるスタートラインを揃えてから、比較して頂ければと思います。
そしてできることなら、安い工事を選ぶことは極力さけることがおすすめです。
家というのは、工事した直後にはその工事が良かったのか悪かったのかわかりませんが、安い工事は必ず数年後に弊害が出てきます。
そして結局、大きな代償をはらうことになるのです。
関連記事 マンション補修塗装工事とクオリティを求める工事とは
もちろん家という特性上トラブルはつきもののため完璧な工事はありません。塗装職人で工事をしたとしても、不具合がでることはあります。
しかし、弊社の工事であれば、数年後に家の状況から不具合が出たとしても状態によって弊社が対処できるのです。
その対処をしてきた証しが、この創業31年という年数となります。
是非一度、弊社の練られた工事の提案や工事をご覧下さい。
お客様の家を守るための可能性を提示いたします。