施工の見どころ
世田谷区用賀にある築17年・3階建てビルの屋上防水改修工事を行いました。
建物は日射や雨風の影響を長年受け、屋上のモルタル下地が複数箇所で劣化しており、防水層の機能低下がみられる状態でした。
また、天窓や笠木など、防水上の注意点が多い建物であることも特徴でした。
今回の改修では、下地に湿気が残っていても施工でき、膨れのリスクを抑えられるウレタン塗膜防水・通気緩衝工法を採用。
立ち上がり部分は密着工法を併用し、建物全体の状態に合わせて最適な仕様を選択しました。
以下、施工工程を順にご紹介します。
下地調整・カチオン樹脂モルタル調整
最初の工程は、劣化したモルタル下地の状態を整える作業からスタートしました。
粉状に崩れている部分や浮いたモルタルをケレンで丁寧に撤去し、ゴミや汚れをしっかり清掃します。
その後、カチオン系樹脂モルタルを使用して表面を平滑に整えます。
この樹脂モルタルは密着力が高く、後工程のウレタン防水との相性も良いため、通気緩衝工法の下地づくりとして非常に重要です。
今回の現場では下地の劣化が進んでいたため、いつも以上に慎重に施工し、弱った箇所を確実に補強するよう心掛けました。
プライマー塗布
下地調整が終わると、ウレタン防水材との密着性を高めるため、ウレタン用プライマーを塗布します。
プライマーは、下地の吸い込みを整え、防水材がしっかり定着するための大切な工程です。
今回は6インチのロングハンドルローラーを使い、広い面積でもムラのない塗り広げを行いました。
通気緩衝シート貼りと転圧
ここから通気緩衝工法の核となるシート貼りに進みます。
シートは屋上の形状に合わせて敷き込み、つなぎ目や端部が浮かないよう丁寧に施工します。
貼り終えた後は、専用ローラーで転圧してブチルゴム層を下地へしっかり馴染ませます。
この転圧が不十分だと後に浮きや膨れの原因になるため、時間をかけて確実に圧着しました。
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ジョイント処理・端部処理
シート同士の継ぎ目にはQVテープを貼り、水の侵入を防ぎます。
また、端部は密着が必要なため、MBテープを使用してしっかり固定します。
この工程は、通気層内の空気の流れとシートの固定を両立させるため、精度の高い施工が求められます。
脱気筒設置
通気緩衝工法では、下地に残った湿気を逃がすための脱気筒が欠かせません。屋上の構造や水の流れを確認し、適切な位置へ設置します。
ドリルで下穴を開けてビス留めし、周囲の密着や補強も丁寧に行いました。
脱気筒の性能は、長期的な膨れ防止に大きく影響します。
ガラスクロス補強
脱気筒まわり、立ち上がり、端部など負荷が集中する箇所には、ガラスクロス補強を施します。
クロスはシワが出ないよう丁寧に貼り付ける必要があり、職人の技術が問われる工程です。
補強を入れることで、防水層の耐久性が向上し、将来的なトラブルを防止できます。
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天窓まわりの防水処理
今回の現場の大きなポイントが、木枠の天窓でした。
木部は湿気の影響を受けやすく、隙間があれば雨水が侵入しやすいため、特に丁寧な処理が必要です。
吸い込みを抑える下地処理、クロスでの補強、ウレタン防水の立ち上げ形成を組み合わせ、天窓全体をしっかりと防水層で包み込むように施工しました。
ウレタン防水 1層目
通気緩衝シートと補強が終わると、ウレタン塗膜防水の1層目を塗布します。
金ゴテやローラーを使い、下地との密着を高めながら均一に塗り広げます。
1層目は防水層の基礎となる部分で、仕上がりにも影響するため慎重に施工しました。
ウレタン防水 2層目
1層目が硬化したのち、防水層の本体となる2層目を塗布します。
規定の膜厚を確保し、全体の強度と耐久性を担保する重要な工程です。
微細な凹凸や傷を補修しながら、滑らかな仕上がりになるよう意識して作業を行いました。
トップコート塗布
ウレタン防水層を紫外線や摩耗から守るため、仕上げのトップコートを塗布します。
9インチローラーを使い、広い屋上でもムラなく均一に施工しました。
トップコートは美観だけでなく、防水層そのものを長持ちさせるために欠かせません。
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仕上がり確認
各工程が完了したあと、最終的な仕上がりチェックを行いました。
膜厚、通気層の動き、天窓の取り合い、笠木まわりの防水性などを総合的に確認します。
笠木を外さず施工したため、取り合い部分の状態を特に丁寧に検査しました。
部材が入手困難な状況であったため、無理に外して雨仕舞いを壊すよりも、「外さずに守る」という判断を採用しました。
今回の世田谷区用賀のビル屋上防水改修工事では、下地の劣化、天窓の存在、笠木の取り合いなど複数の課題が重なった現場でした。
しかし、建物の状態に最適な通気緩衝工法を採用し、下地処理を丁寧に行うことで、長く安心できる屋上へと再生することができました。