屋上防水を施してから10年ほど経つと、防水面の劣化が目に見えて現れます。しかし、素人判断で劣化を見過ごすと、雨漏りや大きなトラブルを引き起こすことがあるのです。
そうならないためにも、屋上防水の劣化の原因を知り、自宅でできる診断のポイントを押さえましょう。
東京都内を施工している東京防水職人が防水工事のプロとして、わかりやすく診断ポイントを解説します。
屋上防水の種類
屋上防水には、ウレタン防水、塩ビシート防水、FRP防水、改質アスファルト防水、加硫ゴムシート防水などがあります。この中でも、世帯数の少ないマンションや戸建てにはウレタン防水、塩ビシート防水、FRP防水がよく採用されていますので、今回はこの3つの工事をメインに詳しくご紹介します。
このブログを読んで、ご自宅の屋上防水がどれに該当するか、確認してみてください。

ウレタン防水
特徴: 液状のポリウレタン樹脂を塗布して防水層を形成する工法です。
屋上、ベランダ、バルコニーなどに適しており、複雑な形状にも対応可能となっています。
主な工法は以下の通りです。
●密着工法: 下地に直接ウレタン防水材を塗布する工法で、立ち上がり部分などで使用されます。しかし、この工法は下地のひび割れに追従できず、亀裂が生じるリスクがあります。そのため、古い防水層への重ね塗りは破断の可能性が高いので推奨しません。

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●通気緩衝工法: 下地と防水層の間に通気シートを設け、湿気や水蒸気を逃がします。脱気筒を通して湿気を排出することで、防水層の膨れを防ぎます。屋上の床面に多く採用されています。脱気筒の設置間隔や数量は、屋上面積や下地の状態に応じて設計が必要です。
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塩ビシート防水
特徴: 塩化ビニル樹脂製のシートを下地に貼り付けて防水層を形成します。単純な形状の屋上に適していますが、細かい形状の床面では施工が難しい場合も。(その場合にはウレタン防水と掛け合わせて工事します)
●密着工法: シートを下地に全面接着します。施工に必要な材料や機材が少ないため、比較的安価です。ただし、下地に水分を含んでいると施工ができません。パラペットの立ち上がり部分などで使われます。
●機械固定工法: ディスクをアンカーで下地に固定し、シートを溶着します。下穴清掃に加え、シートの溶着温度管理やアンカーの適切な配置が重要です。異種材の取り合いにシール剤を施し、水の浸入を防ぎます。
湿った下地や撤去が難しい場合にも施工が可能なため、メリットが大きい工法です。この工法では、アンカーを見極めることが重要となります。
塗装職人では、機械固定工法を採用し、丈夫で蹴り込みにも強い屋上防水を実現しています。

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FRP防水
特徴: 繊維強化プラスチック(FRP)を使用し、強度と耐久性に優れている塗膜防水です。伸縮性が低くひび割れが生じやすいため動きの少ないベランダやバルコニーに適しています。そのため、広い屋上ではあまり採用されません。継ぎ目が少なく、滑らかな防水層を形成し、水の侵入を防ぎます。
施工の際には、樹脂の硬化時間や温度管理が重要で、専門技術が必要です。
耐水性・耐食性に優れ、衝撃にも強い防水ですが、施工する場所の面積やコストを考慮する必要があります。

以上、防水工事の代表的な施工方法を3つ紹介しました。
これらを参考にして、まずはご自宅の建物の図面や施工記録を確認し、どの工法が使用されているかを把握しましょう。その上で、以下の劣化する主な原因をご覧下さい。
防水床が劣化する主な原因
防水工事の種類を理解した上で、漏水や劣化の原因を見ていきます。
主な劣化原因は以下の7つです。
これらの原因をご自宅の屋上と比較し、工事の必要性を判断してください。
経年劣化
原因: 施工してから一定の期間が経過すると、シートの破断、シーリング材の剥がれ、塩ビシートの硬化や破損など。どんなに丁寧に扱っても、時間とともに経年劣化は避けられません
対応年数は、施工方法によって異なりますので以下をご参考になさってください。
<耐用年数の目安>
防水工事種類 | 耐用年数 | メンテナンス |
ウレタン防水(通気緩衝工法) | 10~15年 | 5~8年ごとにメンテナンス |
塩ビシート防水(機械固定工法) | 15~18年 | 定期的な点検(継ぎ目やシーリング部分のチェック)は必要だが、大規模なメンテナンスは不要 |
FRP防水 | 13~15年 | 5~8年ごとにメンテナンス |
〇診断ポイント: ご自宅の屋上防水が耐用年数に近い場合は、一度現場調査をしましょう。ただしウレタン防水や、FRP防水などはメンテナンスを怠ると、10年以内に劣化が進みますのでご注意下さい。
元施工不良
原因: プライマーの塗り忘れや下地処理の不備、排水口の防水皿を外さない状態での施工、相性の悪い防水材の重ね塗りなど。元の施工に不備があると、耐用年数に達していなくてもどこかしらに不具合がでてきます。
防水工事の経験が無い業者や、安い金額で施工を引き受けている業者の場合、施工不良を起こすことが多いです。
診断ポイント: 施工後数年で防水層のひび割れや破断が見られたら施工不良を疑いましょう。定期的に屋上を点検し、不具合を見つけたら信頼できる業者に相談してください。
建物の動き(ムーブメント)
原因: 地震や交通振動で防水層や目地が破断・剥がれます。
診断ポイント: 地震後や目の前に大型トラックが通るなど交通量が多い場合は、防水施工した床面をチェックしましょう。先日まで無かった割れなどが合った場合には、できるだけ早く補修することが必要です。
下地不良
原因: コンクリートのひび割れ、浮き、爆裂(鉄筋の腐食による破裂)が防水層を損傷する状態。下地の下が平らになっておらず凸凹のまま防水工事した場合も破断の原因になります。
診断ポイント: 防水面の膨れや凸凹があれば、専門業者に現場調査を依頼しましょう。
排水不良
原因: 排水口の詰まりや勾配不良で水が滞留し、防水層に負担がかかってしまう状態。
診断ポイント: 排水口を清掃し、水の流れを定期的に確認しましょう。滞留があれば勾配不良を疑います。
材料の相性によるトラブル
原因: 相性の悪い防水材や接着剤の使用で剥がれが発生します。
診断ポイント: 剥がれを見つけたら、防水専門業者に調査を依頼してください。
人為的な問題
原因: 不要な工事や不適切な補修(例: ガムテープ補修)が劣化を悪化させることがあります。
診断ポイント: 防水工事は一級防水施工技能士などの資格を持つ業者に依頼するのがおすすめです。その際には、資格だけで無く現場経験も確認しましょう。
<自宅診断のポイント>
以下のポイントで、屋上の状態をチェックしましょう。
ひび割れや剥がれの確認: 防水面やシーリング材に異常がないか目視でチェック。
排水状況の確認: 水をかけて流れを確認。水が48時間以上滞留している時は要注意。
施工記録の確認: 工法や施工年数を把握し、耐用年数を超えていないか確認。
専門家への相談: 異常が見られた場合や屋上に登れない場合は、信頼できる業者に点検を依頼する。
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屋上防水を長持ちさせるために
屋上防水は、塗装工事とは異なる専門知識と技術が必要です。以下のポイントを押さえて、適切な工事を行いましょう。
●専門業者を選ぶ: 防水工事の知識が豊富な業者を選ぶ。ホームページや職人との会話で実績を確認することが大切。
●定期メンテナンス: 5〜8年ごとにトップコート塗り替えやシーリング補修を行う。
●早期対応: 小さな異常も放置せず、早めに補修を依頼する。
●情報収集: 正しい知識を身につけるため、信頼できる情報源を確保する。
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屋上防水の漏水や劣化は、経年劣化、施工不良、建物の動き、下地不良、排水不良、材料の相性、人為的トラブルが原因です。ウレタン防水、塩ビシート防水、FRP防水の特徴を理解し、自宅の工法を把握しましょう。定期的な点検とメンテナンスで、雨漏りを防ぎ、屋上を長持ちさせることができます。