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神奈川県

鉄筋コンクリート壁のひび割れと爆裂補修

種別タイル, 長尺シート, シール
箇所外壁
鉄筋がさびて膨張したためハツリ施工中 モルタル補修後(後に塗装)

現地調査診断と見積り

以前、工事には至らなかったのですが、別のマンションの見積りをさせてもらったオーナー様からお話しをいただいて、弊社が工事を担当させてもらいました。外壁全体が爆裂等で非常に傷んでおり、外壁の劣化診断をして爆裂補修をすることになりました。

塗料は防かび、低汚染等の機能を持つ日本ペイントのオーデフレッシュSi100Ⅲ、内階段と廊下にはタキステップと長尺シートを張ることを提案しました。

もともとは2棟並びのマンションで、二つの棟を大きな鋼材のアーチが結んでいました。右側のマンションのオーナー様が変わったため、そちらのアーチは外されましたが、こちらの左側のマンションには残っていたため、その撤去工事も行いました。
建物のデザインがおしゃれで、大きな鋼材のアーチを含め、大変印象的な現場でした。

打音検査

マンションの外壁のモルタル補修工事をしていきます。
モルタルの傷んだ箇所や、ひび割れを起こした箇所、躯体面からモルタルが浮いてしまっている箇所などを直していく訳ですが、一か所ずつ対応していては時間がかかってしまいます。なので打診棒と呼ばれる道具を使い、どこがどう悪いのか、という調査を予めし、それらが全て終わってから施工に移るのが一般的な下地工事です。

マーキング

打診棒を使ったり、目視したりしながら何処がどう悪いのかを調べていきます。
ただ調査しただけでは後で何処に何があるのか分からなくなってしまうので、施行が必要な個所を見つける度にどの施行が合っているのかを判断し、予め施工法ごとに決めておいた色をマーカーで印づけていきます。

【壁タイルの打音検査とマーキングの参考動画】

この現場では緑の直線がひび割れ箇所です。
鉄筋コンクリートのためUカットで補修する部分です。

赤く囲った箇所が爆裂です。

欠損、赤く囲い斜線を引いた箇所が塗膜剥離、

赤い直線の両端に丸印をしたものがUカット、

青い点をモルタル注入としています。

また、見落としそうな箇所に補修箇所がある場合は、分かりやすくするように印をしておく場合があります。青い文字で「注」と書いてあるのは、矢印の方向にモルタル注入をする箇所がある、という意味で赤い矢印がある箇所は爆裂・欠損、塗膜剥離、Uカットのいずれかがあるということです。

また、モルタル注入は青いマーカーで「点」で表しているため、見落としやすいです。なので分かりやすく、目立たせるために注入ヵ所を丸で囲んで分かりやすくしています。

実際に調査をすると、見た目以上に補修が必要な箇所があることが分かります。一見何も無さそうな箇所にマーカーで印が入っていることからもそれが分かると思います。
調査がすべて終わったら、爆裂・欠損なら爆裂・欠損だけを全部、ひび割れならひび割れだけで全部といった感じで1つずつ終わらせていくようになります。

【鉄筋コンクリートの劣化と補修の参考ページ】

劣化症状(RC)

爆裂・欠損

爆裂と欠損の補修工事をします。そもそも爆裂とはなんなのか、を説明します。

爆裂とはモルタル・躯体内の鉄筋が錆びて膨れを起こし、内部から周囲のモルタルを破損させてしまっている現象のことです。まるでモルタルが爆発したかのように見えることからこのような名前で呼ばれるようになりました。
欠損に関してはそのままの意味で、モルタルが欠けてしまっているような箇所のことをそのまま欠損と呼んでいます。

爆裂と欠損の違いが分かりやすい写真を並べてみました。大きな欠損箇所が無かったため、小さな欠損写真となってしまいますが、爆裂箇所との違いが分かるかと思います。

また平面ではなく外壁などの角などの欠損は成型技術も必要になります。

【ALCパネルの成型補修の例】

欠損の箇所はモルタルが欠けてしまっている状態なのに対し、爆裂箇所はモルタルが周りから浮いている状態なのが分かりますね。

場所によっては見た目が浮いているように見えなくても、ひび割れ箇所から錆びが染み出ていて爆裂だ、と分かるようなこともあります。

また、最初からモルタルがむき出しになっていて、中に錆びた鉄が埋まっているようなところもあります。

斫り(ハツリ)

実際に補修作業をしていきます。

爆裂では最初に、浮いてしまったモルタルや、傷んだモルタルを撤去していく作業から始めていきます。

写真ではセットハンマーという、通常のとんかちよりも大きなものと、ノミを使い手斫りで作業をしています。この斫り作業を手作業でなく、斫り機と呼ばれる機械を使って行うこともあります。大抵手斫りで作業を行うことが多いですね。

本来モルタルを撤去出来ればそれで問題ありませんが、たまに躯体内の鉄部が外に飛び出しているようなこともあります。そのような箇所をそのまま施行すると、周囲の壁に合わせて平らに仕上げて鉄筋が剥き出しになるか、でなければ鉄筋を埋めるように施行するのでその箇所だけが盛り上がった仕上がりになってしまいます。
なのでそうならないように、ダイアモンドカッターで出っ張った箇所を切断するというひと手間が必要になります。切断してしまえば、仕上げで悩むことも仕上がった後の景観に悩むことも無くなりますね。

ケレン・清掃

モルタルの撤去が終わったらケレンを行い鉄筋の錆を落としていきます。

ケレンというのは元は日本語由来のものではありません。英語のクリーンがケレンに訛ったものだとされています。ケレンの工程は、塗料を塗る前に素地をキレイにし、整えることを指しています。

ケレン作業で使われるのは皮すきと言われる道具、もしくは金ブラシのどちらかであることが殆どです。爆裂のような鉄筋の錆落としでは金ブラシの方が作業効率が上がりますが、絶対に金ブラシでないとダメという訳でもありません。

ケレンが終わったらモルタルや鉄筋の錆の粉塵が残っているので、ラスター刷毛でキレイに取り除けばこの工程は終了となります。

プライマー塗布

ケレンと清掃が終わったらプライマーを塗り込んでいきます。

プライマーとは接着剤のことです。もしケレンの工程の後に掃除をしていなければ、残った粉塵や埃で接着剤が効かないため、掃除も大事な工程だと分かると思います。

このプライマーには防腐剤が含まれているので、鉄筋に塗り込めばそれだけで錆止めの効果も期待できて一石二鳥ですね。昔は錆止め材とプライマーは別でしたので同じ箇所を二度塗る必要がありましたが、今では殆どその必要はありません。

モルタル充填・施工・完了

プライマーを入れたらモルタルを充填し、小手を使い形成していきます。角などの役物は難しいですが、平らな箇所であればさほど難しいものではありません。

【鉄筋が錆びて膨張したマンション外壁の爆裂補修の参考動画】

表面をツルツルに仕上げることも出来ますが、この後に塗装が乗るのでここでもひと手間必要になります。車やプラモデルなどの塗装を塗る時にやる「足付け」です。これは車やプラモ同様、塗装の密着を良くするためにワザと表面をざらつかせる工程で、この後にする塗装乗りを良くするために必ず行います。

足付けまで終われば爆裂補修は完了となります。この後に塗装が入ればキレイな壁になります。

モルタル注入

モルタル注入

モルタル注入工事です。
注入工事とは、躯体面とモルタル、もしくはタイルの隙間を埋める工事のこと。この隙間があると地震があった時、浮いている箇所が落下する危険性があったり、雨水がその隙間に溜まってしまうのを防ぐ工事となります。
地震だけでなく、強い台風でタイルが吹き飛んでしまう可能性もあるので、浮いている箇所は是非注入工事をしておきたいところです。

穴あけ

事前の下地調査でどこに浮きがあるか分かっている状態となっています。早速注入工事を行うための穴あけ作業を始めていきます。

穴あけと一言でいっても、適当に穴を開ければ良いという訳ではありません。注入工事はモルタル・タイルと躯体の隙間を埋める工事なので、当然この隙間まで穴が届いていなければ全く意味がありません。

【外壁を穿孔後、エポキシ樹脂を注入する参考動画】

また、隙間を埋めるのにエポキシ材を使い、躯体とタイル・モルタルを接着するのですが、エポキシ注入の後にステンレスピンを差して補強する必要があります。
となると必然的にこのピンが埋まるだけの深さも必要となるので、深すぎず浅すぎずということが要求される工程となっています。
ステンレスピンは物によって長さ、太さが変わって来るので現場によって穴の深さも変わってきます。
また、穴を開ける間隔も大体ですが決まっており、これは大体20㎝程度。広すぎず、狭すぎずの間隔を意識して穴を開けていきます。

実際に穴を開けた後の写真です。穴の底が見えるような深さではないことが分かるかと思います。

清掃

穴あけが終わったら、穴の中に溜まっている埃の掃除をします。

写真ではゴムボールを使った道具で掃除していますが、これがエアダスターという缶スプレータイプのものだったりすることもあります。
ゴムボールを押すことで、空気を噴き出して穴の中に溜まった埃を吹き飛ばし掃除している様子です。

一見地味ですが注入口の掃除は非常に重要です。この後穴にエポキシを注入していきますが、その際埃を取っていないと中で詰まってしまい、エポキシを注入出来なくなってしまうからです。

エポキシ樹脂注入

穴の中の埃をキレイに吹き飛ばしたらいよいよエポキシ材を注入する作業です。
注入は専用のポンプを使い、圧をかけて躯体とモルタルの隙間にエポキシ材を送り込み、隙間を埋めるだけですが、隙間に材料を送るのに少しコツがあり、慣れていないとなかなかエポキシで埋めることが出来なかったりします。

【エポキシ樹脂を注入ガンに詰める参考動画】

エポキシ材は中でガチガチに硬化して、躯体とモルタルを頑丈に接着させることが出来ますが、量が少なければ接着させることは出来ませんし、逆に多ければ圧をかけて注入しているためモルタルを割ってしまいかねません。なのでそこも注意が必要となります。中の隙間にエポキシが十分に行きわたれば、浮いていた箇所の音が変わるので、少しずつ注入しては叩き、の繰り返しとなります。

ピン差し

エポキシを注入し終わったらネジ式のステンレスピンを差していきます。ピンを差すことでエポキシのみの注入より強い強度が期待出来ます。
エポキシが硬化する前にピンを差していきますが、エポキシが差したピンを押し返してくるのでしっかりと差すようにします。最悪、押し返されたピンが飛び出した状態でエポキシが硬化していた、なんてことにならないようにこの作業も一つ一つ丁寧に行っていきます。

埋め戻し

一通りの工程が済んだら最後に埋め戻しをします。
エポキシとステンレスピンが入っているものの、穴が埋まった訳ではありません。そのままだと注入した箇所が穴だらけとなってしまい景観も良くないです。
埋め戻しをしたら、爆裂・欠損同様上から塗装を入れ完了となります。

【爆裂や成形の外壁下地補修の参考ページ】

ALC4階建ての防水工事と外壁補修の改修工事

Uカット・ひび割れ補修

ひび割れ処理・施工前

マンションのモルタルに入ったひび割れの処理を行っていきます。

どちらも同じひび割れですが、このひび割れの度合いで施行が変わってきます。
この現場では0.5mm以下のひび割れと、それ以上のひび割れで分けており、0.5mm以下を通常のひび割れ(クラック)処理、それ以上をUカット処理としています。

【Uカットによる外壁クラック補修の参考動画】

通常のひび割れと見比べても、Uカット処理の方のひびは目に見えて大きく、表面の塗装がパックリと割れてしまうほどの大きさだと分かります。Uカット箇所はダイアモンドカッターで専用の刃を使って表面のモルタルを削って処理していきます。

ひび割れ処理・ケレン清掃

早速施工していきます。

ひび割れの処理はそんなに難しいものではありません。皮すきを使いケレン・清掃をします。

Uカットはダイアモンドカッターという、あまり馴染みのない道具を使い、ひび割れ箇所のモルタルを削りだしていきます。

この後にプライマーを打ってシーリングを打っています。

クラック処理は経験が結構必要ですが、補修跡を目立たなくせるためにも技術が必要だったりもしてこのような国家資格もあります。

また処理の仕方によって補修材もクイックメンダーやエポキシ樹脂モルタルなど様々なものを使います。

クイックメンダー

Kモルタル

ひび割れ処理・埋め戻し、刷り込み

Uカット箇所はシール処理をした後、爆裂・欠損で使った材料と同じKモルという材料で埋め戻しをします。

ひび割れ箇所は刷毛を使いフィーラー材を、ひびに材料が入るように刷り込みます。

ひび割れ処理・施工後

ひび割れ箇所は刷り込みをすればそれで完了です。

Uカット箇所もKモルを充填し小手で均した後、爆裂・欠損同様に足付けをして完了となります。

【欠損・爆裂・注入の外壁補修の参考ページ】

外壁補修

塗膜剥離処理

施工前

塗膜剥離の処理を行っていきます。
塗膜剥離とは、塗られた塗装が簡単に剥がれてしまう箇所のこと、もしくは塗装が劣化している箇所のことです。他にも、『塗膜脆弱部』というような言い方をする場合もあります。

【鉄筋コンクリート建物の改修と塗膜除去の参考動画】

同じ塗膜剥離でもその度合いは場所によって変わってきます。ここでは二つの写真を選んでみました。
看板のある方の写真は、一見すると問題が無いように見えますが、もう一つの写真は目に見えて塗装面が劣化していることが分かると思います。
塗膜剥離も皮すきを使い、ケレンして密着していない、劣化した塗装を剥がす作業が必須となります。看板のない方の箇所の劣化は特に酷く、ケレンする前で既に塗装が劣化してしまい、中のモルタルが剥き出しになってしまっている様子が写真からも伺えます。

ケレン・清掃

皮すきでケレンし、モルタルに塗装が密着していない箇所を剥がしていきます。全て剥がしたら掃除をしてキレイにしておきます。

プライマー塗布

剥き出しになったモルタルにプライマーを塗り込みます。モルタルの箇所だけでなく、塗装の箇所にも塗るのがポイントです。

施工・完了

プライマーを塗ったら小手を使って仕上げていきます。

モルタルが剥き出しになった箇所だけでなく、塗装のところにも材料がついているのが分かると思います。このように仕上げた方が、塗装を塗り込んだ時段差がつかずキレイに仕上げることが出来るからです。

小手で全体を平らに仕上げたら、刷毛を使い足付けをして完了です。

補修後は十分乾燥させたのち塗装をします。

工程としては、補修した周辺部位と模様を合わすために玉吹きなどのパータン吹きをします。

もしくは砂骨ローラーという特殊なローラーを用いてぼかす作業をしてから塗装をして完了させます。

【砂骨ローラーを使用した塗装の動画】

鉄筋コンクリートと鉄骨造のALCの爆裂補修では、補修材の違いがあったりしますが作業的にな流れはほぼ同じです。

ALCの場合はALCパネル取付時のボルト溶接部の埋め戻し穴からの爆裂をよく見かけますが、それに対しての補修材は発泡コンクリート製の補修材を使ったりします。

樹脂モルタルかサンモルCという補修材の違いになるかと思いますが、乾燥において容積が減ってしまったり気にしなければならないところが出てくるかもしれませんが、いずれにしても平滑に仕上げることがベストです。

【ALCパネルの欠損や爆裂の補修の参考動画】

戸建ての場合は補修なくして塗装という場合も例としてはありますが、ビルやマンションなどの集合住宅の場合は、クラックや爆裂補修なくしての塗装というのはあまりないので、以上の作業の説明が参考になればと思います。