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神奈川県

4階建て庇のウレタン防水と屋上の塩ビシート防水

種別防水, シール
箇所屋上, 外壁, 共用部
施工前 施工後

屋上は端末金具の接合と架台ボルト部のサビ、破けそうなほど劣化しているゴムシートの劣化。
ゴムシートは一部補修してからの塩ビシート防水と庇の保護モルタル面も非常に劣化していたのでウレタン防水を施しました。
建物は鉄筋コンクリートの4階建て全面タイル張りの横浜市内のマンション。
外装は一部コンクリート打ち継ぎ目地のシール打ち替えをしました。

4階建てのRC建てマンションの屋上がメイン

外壁は全面タイルのマンションとなっており、塗装の必要はありませんでした。また、タイルの痛みも必要なかったため、外壁での工事はシールの打ち替えのみとなりました。

屋上の防水は通常通り行っていますが、今回は塩ビシート防水と、ウレタン防水二つの防水工事の二つ。
塩ビシート防水は、一番最新の施工法となりますが、場所によっては対応できないこともあるのでウレタン防水と組み合わせることは多々あります。なのでまだまだウレタンの需要は無くなりそうにありません。

外壁タイル部の打ち継ぎ目地シール

施工前

外壁タイル面のシールの打ち替え工事です。

既存シールの劣化がかなり進んでおり、写真で見て分かる通りところどころタイルからシールが剥がれてしまっている様子が分かります。
このままだとこの隙間から雨水などがタイルの内側に流れこみ、外壁のダメージとなりかねないため早急にシールを打ち換えたいところです。

既存シール撤去

新しくシールを打ち込むために、既存のシール材を撤去して行きます。目地の両側にカッターナイフで切れ目を入れて、シールを引っ張りながら剥がすとシールの撤去ができます。

こういった目地のシール、窓周りのシール共に、幅1㎝、深さ1㎝あれば問題ありません。この写真に写っている目地は、どう観ても深さ1㎝以上あるので、バックアップ材という材料を目地に詰めることで、目地の深さを浅くし余計な材料を使わなくても良いようにしています。
シーリングが3面接着されないように2面接着にする事によって建物自体の伸縮や揺れに対応する事が出来ます。

撤去が終わったらプライマーを塗り込み、新しいシール材を充填して均せば完了となります。

施工後

シールの打ち替えが終わった後の写真になります。

打ち替え前と比べて、ところどころシールが剥がれてしまっていることもなく、また、シール材にこびりついていた埃や苔などもなくなり、キレイになったのではないでしょうか?これで目地から躯体に水が回る心配は無くなりました。

モルタルの劣化が激しい大庇

施工前

外壁のシールが終わったら、次は屋上の横にある大庇(おおびさし)のウレタン防水工事です。

長年放置されていただけあり、庇全体に苔がビッシリと覆っていることが分かります。それだけでなく、庇を覆うモルタルにクラックが入ってしまっています。
かなり劣化しているため、試しに庇を叩いてみると、反響音がしたことからモルタルの浮きがあることも分かりました。
また、塩ビ配管の周りのシールも劣化しているため、この箇所のシールの打ち替え、そしてタイル下の目地材も欠けてしまっているため、ここも補修し、また欠けてしまわないような対策が必要です。

ウレタンを塗る前に、まずはこれらの下地から補修していきます。

注入

ケレン・清掃

一番最初に行うのは掃除です。埃や苔塗れではウレタンを密着させられないだけでなく、庇のクラック1つきちんと対応できないため、埃と苔はしっかりと取り除きます。

頑固にこびりついている苔などは、「皮すき」という鉄板焼きで使うヘラに似たような道具を使い、モルタルの表面を削るようにして剥がしていきます。

写真の手前の白くなった箇所がケレンと掃除が終わった後で、奥の方に写っている黒い箇所がまだ終わっていない箇所です。ケレンと掃除二つで、大分キレイになったのが分かると思います。

マーキング

庇全体のモルタルと躯体の間に隙間ができ、「浮いている」状態なので、注入工事を行い隙間を埋めて、モルタルと躯体をガッチリと付着させます。

そのためには隙間のある箇所に穴を開けて、そこからエポキシ樹脂を注入して付着させる「注入工事」がベストです。注入するために、まずは穴を開ける箇所に印をつける「マーキング」と呼ばれる作業を行っていきます。

穴あけ・清掃

マーキングが終わったらドリルを使い穴を開けていきます。

穴あけの際、かなり埃が出るため、せっかく開けた穴を埃で塞いでしまわないよう、この穴一つ一つをエアダスターを使い、埃を吹き飛ばし掃除していきます。

エポキシ樹脂注入

余計な埃を取り除いたらエポキシ樹脂を注入していきます。

注入ポンプという、専用の道具があるのでそれを使い穴の一つ一つ、必要な量のエポキシ樹脂を注入します。材料が少なすぎれば隙間を埋められず、躯体とモルタルを付着させられませんし、多すぎるとモルタルが割れてしまうことがあるので、ここでは適量きちんと注入します。

ピンニング

エポキシの注入が終わったあと、ステンレスピンを差して補強して終わりです。

このステンレスピンは、注入した箇所の補強です。一部このピンを差さなくても問題ないところもありますが、基本ピンを差すのが一般的です。これらの作業を「ピンニング」もしくは単に、「ピン差し」と言います。

タイル目地新設

タイルの下の目地材が欠けてしまっていることから、入隅に当たる箇所が弱いことが伺えます。新たに目地材を詰めただけだと、また同じように入隅箇所の目地材が欠けてしまうことが予測できるので、タイル数枚分までウレタンで覆うようにしてフォローすることにしました。

また、入隅ヵ所が欠けるということは、いずれは入隅より上にもダメージが入り、タイルが欠けてしまう可能性もあります。そのため、目地を新たに作ることで、緩衝材の役割を果たさせるようにし、タイル面全体にダメージが入らないよう対策しました。

ダイアモンドカッターを使い、タイルの上から新しい目地を作っているところです。この作業も注入の穴あけ同様、かなり埃が出る作業となるので集塵機を使いながら作業するのが一般的です。

ウレタン

下地補修

モルタルの浮きの補修、タイル目地を作ったら今度はクラックの補修をしていきます。

よく見ないと分からないような細さのクラックであればそのままウレタン作業でも問題ありませんが、幅の広いクラックがある場合はそうもいきません。このクラックにウレタンが流れ込んでしまい、硬化した後、その箇所だけウレタンが薄くなってしまうからです。
ウレタンは均一に厚みをつけ層を作ることが大切なので、部分的に厚みが無いだけでも問題となります。ウレタンの薄い箇所があれば、何かの衝撃でそこの箇所が破れるなど、防水した意味がなくなるからです。

そのようなトラブルを避けるため、クラックは予めシール材などで埋めておきます。

プライマー塗布

下地補修まで終わらせて、ようやくウレタン防水の作業となります。

プライマーとはウレタンと躯体を付着させる接着剤のことです。最初に刷毛を使い、周りから塗り込んでいきます。配管などがあり、プライマーやウレタンを付着させてはいけないような箇所や、狭くローラーの入らないようなところがあれば、そこも先に刷毛で塗り込んでおきます。この作業のことを「ダメ込み」と言います。

ダメ込みが終わったら後は全体にローラーを転がしてプライマーを塗り込んでいきます。この時ローラーを勢いよく転がしてしまうと、材料が飛散し周りを汚してしまうので静かに、ゆっくりと転がして塗り込みます。

メッシュクロス貼り付け

プライマーが乾いたらメッシュクロスを貼り付けていきます。

このクロスはガラス繊維で作られたもので、ウレタンを補強する役割があります。ウレタンは地震など、些細な衝撃で切れてしまったりするのでそれを防ぐためにウレタンの中にこのクロスを予め貼り付けています。

ウレタン一層目

クロスを貼り終わったらようやくメインのウレタン作業となります。

写真で使われているのは床用のウレタンです。壁用のウレタンもありますが、それと比べて床用のウレタンは非常に柔らかく、水に近い材料です。逆に壁で使うウレタンは、壁に塗りつけても重力に負けないくらいの固さがあります。

ウレタンを流す作業も、プライマー同様最初はダメ込みから始め、最後に真ん中を流すように作業を進めていきます。流し終わったら硬化するまですることはありません。次の工程に入れるのは大抵翌日以降です。

ウレタン二層目

翌日になり、ウレタンが硬化したので2層目を流していきます。冬の寒い時期だと、1日で硬化しないことも多々あります。

2層目も最初はダメ込みからの作業となります。写真はタイルの箇所と、配管周りのダメ込みを入れている様子です。このように、いきなり床から流すのではなく、周りから作業し大きな部分は最後に流しています。

トップコート塗布

2層目のウレタンも1層目同様、一度流したら次の作業は翌日へ持ち越しです。

2層目のウレタンが硬化したら最後にトップコートを塗り込んで完了です。トップコートはウレタンを紫外線などから守る、保護剤の役割をする材料です。トップコートの有無で、ウレタンの劣化が数年変わるので塗り忘れのないようにしたいところです。

トップコートもこれまでの作業同様、最初にダメ込みをしてから大きな部分を塗り込んでいきます。配管などに飛散してしまうと、落とすのが困難なため今まで以上に慎重に塗り込む必要があります。

施工後

トップコートが硬化し、ウレタン作業が終わった後の写真です。

ウレタン防水をする前と比べて、かなり見違えたと思います。ウレタンにも充分な厚みを持たせることができたため、うっすらと反射しタイル面などが写っているのが分かります。ウレタンが薄すぎると、モルタルが透けてしまいこのように反射させることができません。

最後に配管周りのシールの打ち替えをして大庇の作業は完了となります。

配管シール

配管周りのシーリングも、外壁のシール同様かなり傷んでいたので打ち換えています。打ち替え前のシールは、均した時の継ぎムラが目立っていましたが、打ち替え後はそれもなくキレイに仕上がっているのではないでしょうか。

これで大庇の工事はすべて完了です。

塩ビシート防水

施工前

最後は屋上の防水工事となります。

既存の防水にゴムシート防水が施されています。しかし経験劣化が激しく、ところどころシートが破れ、剥がれてしまっています。シートのカラスが餌を食べる時に突いて穴が開く被害もあります。

また、一部シートの下に水が回ってしまっており、膨張し膨れを起こしていました。継ぎ目の箇所の、シートが重なり合う箇所は劣化のためひび割れを起こしており、アンテナ架台の金物も錆びていました。
外壁と屋上の間にあるからパラペット部分はビスが浮いてシーリングも剥離してきています。本来は、防水シートをタイルの外壁まで巻き付けて金具で止めた施工の方が、このような末端部からの劣化がなくて長持ちします。

塩ビシート防水を始める前に、一度これらの補修をする必要がありますね。

下地補修

まずはシートの補修作業から始めていきます。

水が回り、膨れを起こしている箇所はシートをカットし、中の水を拭き取り乾燥させて再びボンドで圧着して補修します。

ひび割れている箇所は、シール材で補修しました。破れている箇所も、膨れ箇所と同じように、ボンドを塗って補修した後、シール材で仕上げています。これらの箇所は特に「この材料じゃないとダメ」というわけではなく、ウレタン防水で使う立ち上がり材などでも問題ありません。

撤去と設置

下地補修が終わったら既存のドレンの撤去を行います。

ウレタン防水ではウレタン層を作る前にドレンの設置を行いますが、塩ビシート防水ではシートを貼った後にドレン設置となります。他の作業に合わせて、ドレンも進めていき仕上げていきます。

ウレタン防水同様、改修用ドレンを取り付けて水が回らないように密閉できていれば問題ありません。どちらも同じような改修用ドレンを使いますが、ウレタン防水用のドレンはベースとなる箇所が鉛で作られているのに対し、塩ビ防水のドレンはベース箇所が塩ビシートと同じ材質で作られています。

立ち上がり、床の塩ビシートの貼り付けが終わったら、他の箇所同様に熱風溶接機を使いドレンのベースを貼り付け、水が入り込まないように密着させていきます。ベースは余裕を持たせられるよう、大きめに作られていますが、余計な箇所はカッターでカットし、ドレンに見合ったサイズになるように加工しています。

アングルと絶縁シート・ディスク取り付け

下地の補修が終わったら、プライマーを使いラジアルという絶縁シートを貼り付けていきます。ラジアルは隣のシートと重ならないようにピッタリと合わせて貼り付けるようにします。

ラジアルを貼った上から、隅出しをし一定の間隔で穴を開けディスク版を設置していきます。ラジアルの上から、ドリルで穴を開け、アンカーを差し込んでその上にディスク板、最後にネジでしっかりとディスク板を固定。周囲の立ち上がり箇所はディスク板ではなく、アングルと呼ばれる細長い金属を、ディスク板同様アンカーとビスで固定します。

両者共に金属で作られたもので、塩ビシートを貼った後、これらの上から熱を加えてシートを付着させるので、必ず決められた位置に設置することが大切です。

塩ビシート貼り

土台が完成したら塩ビシートを貼り付けていきます。

まずは床に塩ビシートを並べていきます。この時、ラジアルと違い隣のシートと5㎝程重なるように敷いていき、重なった部分に溶着材を塗り込みシート同士を貼り付けていきます。

また、端末箇所も同じように溶着罪を塗り込み、先程打ち込んでおいたアングルに貼り付けます。

この溶着材はそれだけでは大した粘着力が無く、熱を加えることではじめて効果を発揮できるもの。熱風溶接機で高音の風を当てながらシートを繋いでいきます。

これらの作業が終わった後、ディスクの上から加熱装置を使い、熱でシートをディスクに貼り付けます。

最後、シートの端末部、シート同士重なった箇所にシールを打ち込み段差を消せば塩ビシート防水は完了です。

架台

床、立ち上がりの大きな箇所が終わった後、アンテナ架台などの役物の施工を行います。

役物箇所は、アングル板を直接打ち込み、そこに塩ビシートを貼り付けます。役物なので、どうしても「角」になる箇所ができてしまいますが、角専用の材料を使い加工していきます。この材料も当然、熱で溶ける素材で作られているので熱風溶接機で溶かしながらの加工です。

アンテナが設置されている架台は、アンテナを一度外してから塩ビシートを貼り込み、その上に再度アンテナを乗せています。また、アンテナ架台の錆が酷かったのでケレンで落とした後、防腐剤で処理しました。

脱気筒

塩ビシート防水の脱気筒設置は、ウレタン防水ではウレタンを流す前に設置していたのに対し、シートを貼った後に設置します。

まず脱気筒を設置したい箇所の塩ビシートを、カッターナイフでカットします。この時、脱気筒に合わせてカッターを入れる人が多いです。

次に、カットした箇所に合わせて脱気筒を設置し、ディスクやアングル同様にドリルで穴を開けてアンカーを差し脱気筒をネジで固定します。

最後に脱気筒を設置した上から塩ビシートを熱風溶接機で貼り付けて周りをシールで埋めて完了です。

施工後

すべての工程を終えた、屋上の全景の写真です。
パラペットは端末の金具下まで塩ビ防水シートが来ているので、以前のような端末部からの漏水の不安もなくなりました。

施工前はところどころ穴が開いていたり、膨れが生じ全体的に汚れていたのと比べると、大分明るくなり見違えたのではないでしょうか?

これでこの現場の改善修復工事は完了です。